ザッカーバーグCEOが公聴会で証言、5時間の質疑もかみ合わず
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は4月10日、フェイスブック・ユーザーのプライバシーとデータの扱いに関して、5時間に渡って質問に答えたりはぐらかしたりを繰り返した。
米上院の商業・科学・交通委員会と司法委員会からなる合同公聴会でザッカーバーグCEOが証言したのは、先日、フェイスブックで大量のユーザー情報の不正流出が起きている事実が発覚したことが発端だった。
3月、何百万件ものユーザー情報がフェイスブックからケンブリッジ・アナリティカに流れていることが明らかになった。ケンブリッジ・アナリティカは2016年の大統領選挙でトランプ陣営にデータを提供した英国の選挙コンサルティング企業だ。フェイスブックによる現時点での推定では、8700万人ものユーザーが被害を受けたという。
一連の騒動は、SNS世界最大手のフェイスブックが対応を迫られている数々のデータ・プライバシー関連の問題の中で、最新の1つにすぎない。
公聴会の会場には議員のほか、記者やカメラマン、プラカードを掲げた抗議活動家も詰めかけた。ザッカーバーグCEOはまず用意した宣誓書を読み上げ、現在フェイスブックが実施しているデータ・プライバシー問題に関する対策や、ケンブリッジ・アナリティカのような情報乱用の再発防止策についていくつか説明した。たとえば、アプリ開発業者がユーザー情報にアクセスする際の制限をさらに強化する、といったことだ。
その後、ザッカーバーグCEOは数時間にわたって、上院議員らの質問に答えた。たとえば、カリフォルニア州選出のカマラ・ハリス議員は、ケンブリッジ・アナリティカにデータが渡っていたことを2015年の発覚時点でユーザーになぜ通知しなかったのかを尋ねた。もともと2015年の時点で、フェイスブックはケンブリッジ・アナリティカが研究目的と称してデータを購入したことを把握しており、データの削除を要求していた。しかし、要求通りデータが削除されたかどうかは確認していなかった。ザッカーバーグCEOは当時、ユーザーに通知しないという明確な方針をフェイスブックが下したかどうか、明言を避けた。だが、「振り返ってみると、問題が大きくこじれた原因はユーザーへの通知を怠ったからだと思います」とは語った(「Facebook may stop the data leaks, but it’s too late: Cambridge Analytica’s models live on」を参照)。
ザッカーバーグCEOは多くの質問に対して即答は控え、自分の「チーム」から各議員に対し詳細に回答させると述べた。
バーモント州選出のパトリック・リーハイ議員の質問に答えて、ザッカーバーグCEOはフェイスブックがロバート・ミュラー特別検察官に協力していると述べた。ミュラー特別検察官は、2016年の米国大統領選へのロシアによる干渉疑惑を調査している。
さらにフェイスブックは人工知能(AI)を増強し、不快な内容の特定と削除に努めているが、すべての作業をAIに任せるには5年から10年間かける必要があるとも語った。
上院議員の多くは、フェイスブックの仕組みがよく分かっていないようだった。たとえばザッカーバーグCEOは、フェイスブックが広告主に対してユーザー・データを共有したり、売ったりすることはないと、数回繰り返して言わなければならなかった。むしろ広告主は、フェイスブックに対してどういったユーザーをターゲットとしているのか、情報を提供している。こうした理解不足は、フェイスブックが長らく対応に苦慮しているさらに大きな問題を浮き彫りにするものだ。ユーザーの多くは、フェイスブックのスタッフほど技術(要するにフェイスブックの仕組み)に精通していないのだ。
今回はザッカーバーグCEOが証言する2つの公聴会の1回目だった。4月11日には、ザッカーバーグCEOは下院のエネルギー・通商委員会で証言する。この模様は委員会のWebサイトで閲覧できる。