ハエの脳神経回路の高解像度マップ、グーグルの研究者らが発表
グーグルとバージニア州のハワード・ヒューズ医学研究所ジャネリア・リサーチキャンパスの研究者が、世界最高となる高解像度の脳神経回路マップを発表した。「コネクトーム」と呼ばれるこの神経回路マップには、ショウジョウバエの脳にある2万5000個のニューロンとその間の2000万のつながりを示す配線図が示されている(詳しい画像はこちら)。
今回発表されたコネクトームには、ハエの脳の直径約250マイクロメートル(髪の毛2本の太さに相当)の領域が示されている。マッピングされた領域はハエの脳全体の約3分の1を占め、記憶と位置感覚に関連する領域が含まれている。この研究に関する論文原稿はプレプリントサーバーのバイオアーカイブ(bioRxiv)で公開されており、データは誰でも閲覧およびダウンロードできる。
コネクトームを作成するにあたって研究者らは、ハエの脳を極薄に切り分け、各切片を電子顕微鏡で精査した。そして、50兆個の3Dピクセルを生成し、アルゴリズムを使用して各細胞の経路を追跡した。グーグルは膨大なコンピューティング・リソースを有するが、データのチェックには多くの手作業を要した。
特定の脳領域と行動の関連性を解明したいと考える神経科学者にとってこの成果は画期的だ。これまでに完全な脳マップが作成された動物は、ニューロンが約302個しかない線虫の一種「カエノラブディティス・エレガンス(C.Elegans)」だけだった。1986年に公開されたカエノラブディティス・エレガンスのコネクトームの論文原稿は、ニューロンが温度にどのように反応するかなど、特定のニューロンと行動の関連性について有益な洞察をもたらした。しかし、すべての神経科学者が、「コネクトミクス」と呼ばれるこの方法での脳マッピングが、もっとも優れた研究方法だと確信しているわけではない。たとえば、コネクトームはリアルタイムで動物のニューロンの発火の様子を示すことができない。
加えて、人間の脳全体のコネクトーム作成までには、まだまだ長い道のりがある。ショウジョウバエの脳のニューロン数は約10万であるのに対し、ヒトの脳には約860億個のニューロンがある。