新型コロナとインフルの似ているところ、違うところ=WHO報告
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの違いをまとめた報告書を発表した。
新型コロナとインフルの類似点
感染経路は接触感染:どちらもウイルスが付着した人や物に触れた手で自分の顔を触ることで、感染してしまう(新型コロナウイルスは、感染者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染の可能性もある)。
症状に類似点が多い:新型コロナウイルスもインフルエンザも、さまざまな形で呼吸器系に影響を及ぼす。どちらも発熱、倦怠感、咳を引き起こす。深刻な呼吸器疾患は肺炎につながり、死に至ることもある。
新型コロナとインフルの相違点
新型コロナウイルスの感染速度はインフルエンザを下回る:恐らくこの点が最大の違いだ。インフルエンザの方が、潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)と発症間隔(感染源の発症から2次感染者の発症までの時間)が短い。WHOによると、新型コロナウイルスの発症間隔は約5〜6日だが、インフルエンザの発症間隔は3日ほどだ。したがって、インフルエンザの方が感染拡大のスピードが速い。
ウイルス排出:ウイルス排出は、ウイルスが宿主に感染して繁殖し、周囲に放出しているときに発生する。したがって排出によって感染者が他人にウイルスを感染させてしまう。新型コロナウイルスの感染者の一部は、感染から2日以内で症状が出る前にウイルスを排出していた。とはいえWHOは、このような感染者は恐らく感染拡大の主因ではないと考えている(今週発表された査読前の論文では、新型コロナウイルス感染症の患者は無症状か軽度の症状を示す初期段階に、大量のウイルスを排出していることが示されている)。
インフルエンザウイルスは通常、症状が現れてから最初の2日間にウイルス排出が起こり、最大1週間排出が続く。しかし、ランセット(The Lancet)に発表された中国の患者に関する研究によると、新型コロナウイルス感染症の患者は約20日間(または死亡するまで)ウイルスを排出し続けていたことが分かった。検出されたウイルス排出最短期間は8日だが、37日目にウイルスを排出していた症例もあった。このことから、新型コロナウイルス感染症の患者が、インフルエンザ患者よりもはるかに長く感染力を維持すると考えられる。
2次感染:たちの悪いことに、新型コロナウイルスはさらに2つほどの2次感染を起こす。インフルエンザも一般的な肺炎などの2次細菌感染を引き起こすことがあるが、インフルエンザ患者が2つの2次感染にかかることは珍しい。WHOは状況が重要だと警告した(たとえば、感染者がもともと別の病気を患っていた可能性がある)。
新型コロナウイルスを広めているのは大人:インフルエンザでは子どもが感染の原因であることが多いが、新型コロナウイルスは大人の間で感染が広がっているようだ。したがって、最も深刻な影響を受けているのは、高齢者と基礎疾患がある人を中心とした大人だ。ワシントンポスト紙によると、子どもたちが新型コロナウイルス感染症の重症化を免れている理由について、専門家は困惑している。子どもは、新型コロナウイルス近縁のコロナウイルスを原因とする風邪にかかりやすく、新型コロナウイルスに対する免疫を持っている可能性があると推測する専門家もいる。また、子どもの免疫系は常に警戒態勢にあり、大人よりもすばやく新型コロナウイルスと戦うからとの見方もある。
新型コロナウイルスはインフルエンザよりもはるかに致命的:死亡件数を症例報告件数で割った新型コロナウイルスの致死率は、これまでのところ約3%〜4%だが、まだ報告されていない症例が多くあるため、実際はこの値を下回る可能性が高い。一方、インフルエンザの致死率は0.1%だ。
新型コロナウイルスには治療法やワクチンは存在しない:新型コロナウイルス感染症の治療法やワクチンの開発は進んでいるが、まだ存在しない。一方、インフルエンザ・ワクチンは存在する。インフルエンザ・ワクチンを接種すれば、今後数週間に医療機関にかかる多大な負担の軽減につながるかもしれない。