スパコン世界トップ500が発表、8位の産総研ABCIに見る新潮流
世界の最新スーパーコンピューターの最速トップ500のリストの発表とともに、6月17日、国際スーパーコンピューティング会議(ISC)がフランクフルトで開幕した。リストの1位と2位は米国のコンピューターが死守したものの、もっとも多くランクインしたのは中国だった(米国の116台に対し中国は219台)。
今回のリストには、人工知能(AI)のプログラミングを簡素化し、特定のAIタスクを高速化する機能を含むコンピューターもランクインしている。すでにスーパーコンピューターによって、いくつかのAIアプリケーションは高速化されている。 たとえば、トップ500のリストで第1位となった米国の「サミット(Summit)」(上の写真)は、すでに他のどのマシンよりも速く、気候研究のための複雑な機械学習モデルを実行している。
しかしAI研究者らは、スーパーコンピューターの利用はいまだに困難を伴うという。スーパーコンピューター上で稼働するプログラムを準備するのは複雑で時間がかかる作業だというのがその理由だ。今年のイベントで、スーパーコンピューターの製造者や運用者はそうした作業をいかにして簡単にするかを示した。
8位となった日本製のスーパーコンピューター「AI橋渡しクラウド(AI Bridging Cloud Infrastructure、ABCI)」( 産業技術総合研究所が構築・運用) は、チップメーカーのエヌビディア(Nvidia)が開発したチップとともにソフトウェア「コンテナ」を採用している。 コンテナは、アプリケーションと、アプリを実行するのに必要なソフトウェア・ライブラリおよびその他のサポート・ソフトウェアをまとめたものだ。産総研の説明によると、コンテナを使用することで深層学習モデルを従来よりはるかに高速に実行できるようになったという。
米国のスーパーコンピューター・メーカーのクレー(Cray) は、衛星などの地理空間データからマシンを学習させるAIプログラムを従来よりもはるかに簡単に実行できる新しいソフトウェアを発表した。同社は、深層学習用の新しいプラグインによって、天気予報から石油探査に至るまで、地理空間データを利用するアプリケーションで使われるモデルを訓練する際の所要時間を劇的に短縮するとしている。
多くのAIプログラムは、コンピューティング・クラウド内で互いに接続されたそれほど強力ではないマシン上で実行されている。しかし、スーパーコンピューターがより容易にAIタスクを実行できるようになれば、AI分野のさらなる進歩が見込まれるはずだ。