遺伝性アルツハイマーの発症を抑える遺伝子変異を発見
ある女性に、アルツハイマー病の発症を防いだ可能性がある稀な遺伝子変異が発見され、医薬品開発者が関心を寄せている。ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。
この発見は、コロンビア山岳地帯で暮らす、早期発症型家族性アルツハイマー病に苦しむある家系の人々の研究から導かれた。代々受け継がれている遺伝子欠損が原因で、その一族の多くは40代で同病を患い、60歳頃に死亡する。ニューヨーク・タイムズ紙によると、当地では「ラ・ボベラ」(「愚かな」の意味)と呼ばれているという。
一族の中で、アルツハイマー病の発症をなぜか免れた一人の女性が見つかった。研究者らは彼女が発症しなかった理由がわかったと考えている。コロンビアの第2の都市メデジンに住んでいるこの女性(匿名)は、通常ならアルツハイマー病に関わる粘着性のアミロイド斑が脳内に多く蓄積していたにもかかわらず、70歳を過ぎるまで知的能力を失うことはなかった。
学術誌『ネイチャー メディシン(Nature Medicine)』に11月4日、この女性の脳の防御源に関する有力な推測が報告された。女性には、APOEという別の遺伝子に2つ目の稀な遺伝子変異があり、その遺伝子変異が病気の発症を抑えたと研究者たちは考えている。
どうやら女性のゲノムは、アルツハイマー病の原因になる遺伝子と、同病に対する防御となる遺伝子の両方を持っていると見られる。
一般的なアルツハイマー病の阻止方法について、製薬会社に新たなアイデアを与える可能性がある大きな発見だ。科学者の間ではすでに、その人が持っているAPOE遺伝子の遺伝子型によって認知症発症リスクが高まることが知られている。発症リスクの低い遺伝子型のAPOEを患者に与える遺伝子療法を検討している科学者さえいる。今回、1人の人間の研究を通じて、最適な遺伝子型の候補が発見されたようだ。