米国司法長官、アイフォーンのロック解除をアップルに要請
ウィリアム・バー米国司法長官はアップルに対し、12月に米海軍兵士3名を銃撃したサウジアラビア空軍の男が所有するアイフォーン(iPhone)のロックを解除するよう要請した。
暗号とプライバシー、安全保障をめぐるシリコンバレーと司法省との新たな戦いの始まりを告げるニュースだ。
アップルはすでに米国の捜査当局に対し、ペンサコーラ海軍航空基地の襲撃犯、モハメド・サイード・アルシャムラニのアイクラウド(iCloud)アカウントから取得したデータを提供している。だがこれまでのところ、アップルはバー司法長官の要請にもかかわらず、アイフォーンのロック解除を拒否している。MITテクノロジーレビューはアップルにコメントを求めたが、返答はすぐには得られなかった。
アイフォーンは、所有者以外が端末上の情報へアクセスすることを避けるため、強力な暗号化によって保護されている。より強力なプライバシー保護を求める消費者の声に押され、暗号化は過去10年で一大ブームになった。2019年7月、政府による暗号化データへのアクセス合法化を訴える演説でこの論争を再燃させたバー司法長官にとって、ロック解除はますます重要な政治目標となっている。だが、マイケル・ヘイデン元米国国家安全保障局長官や暗号専門家マシュー・グリーン博士など合法化に批判的な人々は、「バックドア」によってインターネットのセキュリティとプライバシーが大きく損なわれる恐れがあるという。司法当局による捜査にたびたび手を貸してきたアップルや大手シリコンバレー企業も、自社製品に使用している強力な暗号化の解除を求める当局の要請を拒否し続けている。
「私からの助言は、すぐに行動を開始すべきだということです」。リンゼー・グラム上院議員は、先月開かれた公聴会でアップルとフェイスブックの代理人に対してこう述べた。「なぜなら、来年の今頃に適切な方法が見つかっていないようなら、我々の要望を通すことになるからです」。
暗号化データの問題を巡るこれまでの大きな争いは、2015年と2016年、カリフォルニア州サンバーナーディーノで14名の命を奪ったテロリストの携帯電話をめぐる、アップルと米国連邦捜査局(FBI)との法廷闘争だ。当時のジェームズ・コミーFBI長官は法的手段により、襲撃犯サイード・ファルークのアイフォーンのロックを解除する新たなツールをアップルに開発させようとした。だが、携帯電話のハッキングを手がけるイスラエル企業のセレブライト(Cellebrite)とFBIが契約したことを受け、最終的には引き下がった経緯がある。