英国議会、ソフトバンクの「ペッパー」を証人喚問へ
英国議会の特別委員会が、議会の公聴会にロボットを証人として呼び出し、人工知能(AI)とロボット工学について証言するよう求めている。
議会に呼び出されるのは、ソフトバンクロボティクスが開発した「ペッパー(Pepper)」だ。ペッパーは、以前にもそのフレンドリーな人間らしいデザインにより、マスコミに大きく取り上げられたことがある。
ユーモアのある画期的な出来事のように思われるかもしれないが、ペッパーによる証言は、世間のAIの能力に対する大きな誤解を招く可能性がある。現在のところAIの技術は、独創的な考えを系統立てて述べることもできないし、高度に制御された環境以外で、即興で発言や行動ができるほど進化してはいない。すでに議会によるこの動きは混乱を招いており、インデペンデント紙は「ペッパーに質問の答えが前もってプログラムされるのか、それともペッパーはAIを頼りに回答するのか」と疑問を投げかけている。誤解がないように言うと、質問の答えが前もってプログラムされることになるはずだ。ペッパーがAIを頼りに回答することは、まだ不可能だからだ。
議会による今回の発表は、無益な宣伝行為だとしてAI研究コミュニティによる批判を受けている。「現在のロボットは知的能力を持っておらず、有意義な証言をすることはできません。ただの人形劇です」とルイビル大学のローマン・ヤンポルスキー准教授はメールで述べた。バース大学のジョアナ・ブライソン博士は、ツイッターで「ロボットが証言をするように見せかけることで、個人や組織は偽証罪を犯すことになります。議会が国家統治という本来の役割を果たさずに、メディアを騒がせているだけです」と述べた。
AIやロボット工学を推進、展開したり、規制したりする公的機関や民間企業は、これらのテクノロジーができること、できないことについて、一般市民を啓蒙し、慎重に情報を伝える責任を担っている。今回の動きは、英国の国会議員がテクノロジーについて十分に理解していない可能性を提起するものだ。ペッパーが、議論に加わってくれるものと期待してはいけないのだ。