EU、顔認識技術の一時使用禁止を検討
米国のニュースメディア、ポリティコ(Politico)が入手した文書の草案によると、欧州委員会は、研究および保安目的のプロジェクトを除き、公共の場での顔認識の使用を最長5年間禁止することを検討しているという(ただし、この草案には対象となるプロジェクトは明記されていない)。欧州委員会が顔認識を一時的に禁止する狙いは、研究者や政策立案者がこの技術に対してどのように規制を設けるのが最善であるか、調査する時間を与えることにある。
欧米の活動家らは、顔認識の使用は女性や有色人種に対しては精度に欠けており、本人の同意なしにスパイ行為に利用される可能性があるとして懸念を表明している。欧州のデータ保護機関は、有力企業や政府が人の顔を測定の対象とすることは、人間の尊厳を損なう可能性があることを文書で伝えている。また、英国の調査結果では、国民の46%が顔認識を拒否できると考えていることが明らかになっている。
サンフランシスコやマサチューセッツ州サマービルなどの都市では、政府による顔認識の使用が禁止されている。興味深いことに、活動家たちが顔認識の私的利用の禁止を求めている一方で、シンクタンクのピュー研究所(Pew Research)による調査によれば、多くの米国人は警察の顔認識の使用に企業よりも寛容だ。
確かに欧州では、警察からスーパーマーケットに至るまで顔認識が猛烈な勢いで広がっている。一方で、最近ではフランスとスウェーデンが、学校敷地内での顔認識の設置を差し止めている。そして、顔認識技術が及ぼす影響の評価に時間をかけることは、技術が広く普及した後に規制するよりも安全だ。欧州委員会の提案は2020年2月の正式発表時には変更される可能性があるものの、米国大統領選の候補者の多くが求めている規制案よりも強固な立場を取っている。