WHO、新型コロナウイルスで国際緊急事態宣言
世界保健機関(WHO)は、中国から広がっている流行性ウイルスに対し、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
ジョンズ・ホプキンズ大学によると、これまでのところ新型コロナウイルスと確認された症例は22カ国8000件以上となり、死者は171人に上っている。
患者のほとんどは中国に集中している。中国では2019年11月に武漢市で初めて新型ウイルスの流行が始まったと言われている。
米国当局は1月30日、武漢から帰国したシカゴ在住の女性と夫の間で、このウイルスが初めてヒトからヒトへ感染したと発表した。ベトナム、ドイツ、日本でもヒトからヒトへの感染が見つかっている。
1月30日、専門家による国際保健規則(IHR)の緊急委員会は何時間もの議論の末に緊急事態宣言を出した。「ウイルスが中国だけでなく、他の国々でも発生しているため」とWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は説明。医療体制がぜい弱な国で新型肺炎が蔓延することへの懸念を表明した。
WHOの宣言は、今回の新型コロナウイルスが他国を危険にさらし、各国間の協調的対応を必要とする異常な出来事であることをWHOが公式に分類したことを意味する。
いくぶん象徴的なものではあるものの、WHOは緊急事態宣言によって、国際保健規則に基づき、中国にさらに多くの援助を提供し、国際援助を調整、動員し、貿易や渡航について一時的な勧告を出せるようになる。
だが、テドロス事務局長は、現時点でWHOは中国との貿易や渡航を制限することは推奨しておらず、「むしろ反対だ」と述べた。香港をはじめとするいくつかの地域は、すでに中国本土への渡航を制限。ブリティッシュ・エアウェイズとアメリカン航空は今週、中国便の運行を中止または制限すると発表している。
WHOはまた、国境の閉鎖や健康に問題のない航空機乗客の隔離、その他同様の措置についても疑問を呈した。
テドロス事務局長はまた、ツイッターなどソーシャルメディアで広がるウイルスに関するデマと闘うよう各国に呼び掛けた。同事務局長は、「今は恐怖ではなく事実、噂ではなく科学に基づき、烙印を押すのではなく連帯する時だ」と述べた。
この新型ウイルスはヒトからヒトに感染し、咳や発熱、肺炎などの症状が現れるまで5日ほどかかる。感染者の約25%が重症化し、約2%(主に高齢者)が死亡している。
WHOは早期に緊急事態宣言を出さなかったことで非難を浴びたが、宣言には中国との協議が必要だった。一週間前、WHOは、新型肺炎は他の国々で症例が少なく、中国国外でのヒトからヒトへの感染がないことから国際的な緊急宣言は必要ないとしていた。
だが、WHO関係者によると、中国での件数が急増し、他の国でも数件の発生が伝えられたことからWHOは1月31日、「ほぼ満場一致」の投票で方針を180度転換した。
中国政府は病原菌の拡散を阻止するために、鉄道、バス、飛行機の運行を中止し、武漢市を含む全都市を封鎖した。
記者会見で、WHOのテドロス事務局長は中国と習近平国家主席の対応を称賛し、次のように述べた。「中国はアウトブレイクへの対応に関して新しい基準を設けている。中国政府の取り組みがなければ、今ごろ中国以外でもっと多くの人が発症し、おそらく死者が出ていただろう」。
これまでのところ、確認された事例の99%は、まだ中国国内での発生にとどまっている。