火星への有人飛行目指す、スペースXが「スターシップ」を公開
スペースX (SpaceX)のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は9月28日、月と火星に乗客を運ぶロケット「スターシップ(Starship)」の開発状況についてプレゼンテーションした。マスクCEOの講演はテキサス州ボカチカにあるスペースXの施設内で、スターシップの巨大な試作機の前で行なわれた。イベントのタイミングは偶然ではない。その日はスペースXが民間として、初めて液体燃料ロケットを軌道へ送ってから11年目の記念日だったのだ。
スターシップはまるで野獣のようだ。高さは165フィート(約50メートル)を超え、スペースXの再利用可能な「ラプター(Raptor)エンジン」が3基取り付けられている。重量は燃料を積んだ状態で約1400トン。スペースXの「スーパーヘビー(Super Heavy)ブースター」と組み合わせると、史上最大かつ最も強力なロケットとなる。1969年にアポロ宇宙飛行士を月に運んだ「サターン(Saturn)V」の約2倍の推力を生み出すという。スペースXはまったく同一の2基のスターシップを、1基はテキサス州、もう1基はスペースXが大半を打ち上げるフロリダ州ケープカナベラルの自社施設で組み立てている。
マスクCEOは、ロケットのテスト飛行はこれから「1〜2カ月」以内に実施され、2020年のある時点で最初の乗客を運ぶことになると主張している。最初のテスト飛行でスターシップは12マイル(約20キロメートル)の高度まで飛行して地球に帰還する予定だという。 マスクCEOの長年の野望は、人類を火星に運ぶことだ。
この大々的な発表に、誰もが大喜びしているというわけではないようだ。発表イベントに応え、米国航空宇宙局(NASA)のジム・ブリデンスティーン長官は、NASAの商業乗員輸送プログラム(Commercial Crew program)とは焦点がずれていると、やや皮肉をこめたメッセージをツイッターで発信した。
「スペースXの発表を楽しみにしています。その一方で、商業乗員輸送のスケジュールには何年も遅れがみられます。商業乗員輸送プログラムには米国納税者のお金が使われているわけですから、こちらにも力が入ることを期待しています。そろそろ、実現の約束を果たす頃でしょう」。
スペースXはボーイングと並ぶ商業乗員輸送プログラムの主要請負業者2社のうちの1社であり、NASAの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションなどへ運ぶ「クルー・ドラゴン(Crew Dragon )モジュール」を開発中だ(「Can SpaceX and Blue Origin best a decades-old Russian rocket engine design?」を参照)。