糖尿病患者に朗報か、飲む「痛くない注射」MIT教授らが開発
注射が嫌いな人に朗報だ。予防接種、インスリン注射、点滴などはいつの日か、薬剤を胃壁に直接注射するスマートピルに取って代わられるかもしれない。
多くの医薬品は、胃の中の強い酸性の環境に耐えられないため、経口投与には不向きだ。しかし、サイエンス誌に2月8日付で発表された論文によると、新たに考案された装置がこの問題を解決し、実質的にどんな薬でも経口投与できるようになるかもしれない。
この新しい装置が機能する仕組みは次の通りだ。まず、経口投与された装置が独力で胃の内部に付着する。次に、装置の中に入っている薬剤を胃壁に注射する。薬剤が適切なタイミングで放出されるようにするため、非常に巧みな仕組みが導入されている。装置内部のばね仕掛けの極小の針が、周囲の糖ガラスが胃酸に溶かされた時点で飛び出すのだ。
論文の共著者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)のロバート・ランガー教授によると、消化管の内部には痛覚受容体が存在しないため、痛みは感じないという。ヒョウモンガメの甲羅に着想を得ており、どのように胃壁に付着した場合でも自動的に直立するようになっている。装置が胃の中をどう転がっても、胃壁に着実に付着できるのだ。
ランガー教授は、「インスリンを、注射と同じレベルで安全かつ効果的に経口投与できたのは初めてです。この新しい装置が、実質的に、注射で投与するほぼすべての薬に取って代わることは間違いないでしょう」と述べている。この装置が、健康管理のために最低でも1日1回はインスリン注射をする必要がある世界中の4億1500万人の糖尿病患者の生活を変えるかもしれない。
ただし、この新しい装置は、まだ概念実証の段階にある。動物で実験されただけであり、一般に使われるようになるのは何年も先のことになるだろう。