ゲイツもかつて提案した「ロボット税」、いまこそ導入すべき?
ロボットに課税すべきだろうか? 賛成派は、人間の労働に課税しているのだから当然課税すべきだと主張し、反対派は、イノベーションが減速してしまうから課税すべきではないと主張する。
ロボットに課税するという考えは目新しいものではない。数年前にビル・ゲイツが自動化による雇用の破壊の進行を遅らせる手段としてこの戦略を発表した際に、その気運が高まった。この提案に対し、バラク・オバマ政権時代に経済顧問を務めた、ハーバード大学のローレンス・サマーズ元学長は、「まったくの見当違い」だとしてすぐさま反論している。
6月11、12日に開催されたMITテクノロジーレビュー主催の仕事の未来に関するカンファレンス「エムテック・ネクスト(EmTech Next)」でも論戦は続いた。「ロボット税は自動化によって失われる雇用の問題解決の一助となるのか?」という問いに対し、英国のサリー大学で法制度と健康科学を専門とするライアン・アボット教授が課税賛成派の論客として、エコノミスト誌の経済学コラムニストであるライアン・アヴェントが課税反対派の論客として、壇上で激論を戦わせた。両氏は以前にも、それぞれ賛成と反対の立場について説明している。
課税賛成派の主張はこうだ。現在人間の労働に課しているのと同様の税金を機械に課さないということは、実際にはロボットに対して過大な助成をしていることになる。さらには、資本償却という形で、より多くのロボットたちに対し、税制上の優遇措置さえ与えているという。つまり、課税賛成派の言い分は、ロボットに直接課税するのではなく、ロボットを含めた資本設備に対し、より公平に課税すべきだということである。アボット教授は、自動化で効率が向上するのなら、企業は、人間と比べて節税に有利であるという観点からではなく、効率性という観点からより多くのロボットの使用を決めればよいと主張している。
MITテクノロジーレビューの考えは次のようなものだ。確かに、ロボットに課税することが自動化による雇用喪失の問題の解決とはならないだろう。しかし、ロボットに課税することは、想像するような過激なことではまったくなく、反機械化的な動きでも決してない。私たちは労働に課税しており、自動化はますます人間の労働にとって代わってきている。少なくとも、人間よりもロボットを優遇する税制措置をやめるべきだ。国民所得における資本比率が高まり、格差が広がっているのは懸念すべき傾向だ。それが、自動化やロボットによるのか、他の要因によるものなのかはまだ分からないが、何かが間違っていることは確かだ。 ロボットに課税しないのであれば、誰がロボットを所有することになるのかについて真剣に考える必要があるだろう。
残念ながら、エムテック・ネクストの聴衆は課税に反対であった。参加者の約70%がロボット非課税に賛成だった。