米政府が量子技術に2.5億ドル投資、「基礎研究重視」を強調
米国の2つの政府機関から提供される資金の正確な額は、2億4900万ドルだ。しかし、金額と同じくらい重要なことは、「資金が何に使われるべきか」という背景にある考え方である。
米エネルギー省(DOE)は、大学や国立研究所の85の研究プロジェクトに対して、今後2年から5年間で2億1800万ドルを投入する。一方、米国立科学財団(NSF)は、量子センシングやコンピューティング、コミュニケーションなどの分野に3100万ドルを拠出する予定だ。今回の資金提供の話は今週、ホワイトハウスで開かれた会合で、量子情報科学に関する米国の国家戦略の概要を記した文書とともに発表された。
米国の国家戦略は、 基礎研究の支援を強調する「サイエンス・ファースト」のアプローチを標榜している。というのも、量子技術を使った最良の商業利用がどのようなものか判断するには時期尚早だからだ。DOEの構想はその好例だ。DOEのプロジェクトのうち、5年間で3000万ドルの助成金をローレンス・バークレー国立研究所に支給するプロジェクトでは、最先端の量子試験用プラットホームを構築・運用する。ローレンス・バークレー国立研究所のイアファン・シディキ所長によると、研究者が多様な超伝導量子プロセッサーを研究できるように、プラットフォームはオープン資源化する予定だという。
米国の国家戦略はさらに、米国内に量子テクノロジーを理解するより多くの研究者を育成する必要性を強調している。特に、若手研究者への手厚い支援を推奨し、大学に量子科学部や量子工学部を設立するように求めている。
ホワイトハウスでの会合の出席者がMITテクノロジーレビューに語ったところによると、会合ではどうすればより多くの女性を量子研究の研究者として受け入れられるのか、あるいは優秀な外国人研究者にビザを発給して米国に迎え入れる方法についての話も多く出たという。「量子技術分野において、世界をまたぐ優秀な人材獲得競争の渦中に自分たちがいることを深刻に受け止めました」と、量子コンピューティングのスタートアップ企業、ザパタ・コンピューティング(Zapata Computing)のクリス・サボア最高経営責任者(CEO)は語る。
(今回の発表とは別に)米議会もまた、5年間で約13億ドルの追加資金の提供を含む国家的な量子戦略を立てようと、立法化に取り組んでいる。ただし、中間選挙が迫る中、法案成立が遅れる可能性が懸念されている。