「量子機械学習の実用化はまだ先」MITの専門家らが議論
人工知能(AI)と量子、双方の分野の専門家たちの討論によると、量子コンピューティングが近い将来すぐにAIに革命をもたらすことはないという。
深層学習の父の一人であるヨシュア・ベンジオ教授が10月2日、IBMやマサチューセッツ工科大学(MIT)の量子コンピューティングの専門家たちのパネルディスカッションに参加した。他の参加者には、有名な量子アルゴリズムのほとんどに関わってきたMITのピーター・ショア教授などがいる。ベンジオ教授は、新たなコンピューターの設計を模索してみたいと語り、量子コンピューターでどのようなことが可能になるか、パネリストたちに質問を浴びせていた。
パネルディスカッションに参加した量子の専門家たちは、量子コンピューターの機能は向上しているものの、何らかの有益な機械学習ができるようになるには、あと何年もかかると説明した。必要なエラー補正をするために、多くのキュービットを追加せねばならないことが一因だという。 加えて、事態を複雑にしているのは、量子コンピューターが従来のコンピューターと比べて厳密にどのような作業で優れているかがあまり明確ではないことだ。とはいえ、MITのアラム・ハーロー准教授とIBMのクリスチャン・テンメの2人は、量子機械学習に関する初期研究は現在進行中だと述べた。
今回のパネルディスカッションはMITとIBMが主催した。MITとIBMは、材料やコンピューター・アーキテクチャ、次の大きなブレークスルーをAIにもたらす可能性を秘めた物理法則のイノベーションを調べる研究に共同で取り組んでいる。 この共同プロジェクトが重要なのは、AIで現在起こっているイノベーションの大半がソフトウェア・アルゴリズムに関するものであり、進歩に限界の兆しがすでに見えているからだ。新たなハードウェアが誕生すれば、それが量子コンピューターであるかどうかにかかわらず、次の飛躍をもたらす可能性がある。