オキュラスの創業者が米軍と契約、「軍事用VR」供給へ
テクノロジー業界で何かと物議を醸している一人の人物が、米軍のために実質現実(VR)と他の技術を開発する新たな計画を立てている。
パルマー・ラッキーは、自身が創業した企業オキュラス・リフト(Oculus Rift)をフェイスブックに売却し、富を築いたVRのパイオニアだ。ラッキーは、自身の保守的な思想や発言に加え、不法移民を取り締まるのに役立つ「バーチャル国境壁」の開発を目指していることで知られるようになった。米ニュースサイトのインターセプト(Intercept)によると、ラッキーが創業した新しい企業アンドゥリル・インダストリーズ(Anduril Industries)が今回、ペンタゴン(米国防総省)の「プロジェクト・メイブン(Project Maven)」という賛否の分かれるプロジェクトに関して契約を結んだという。
アンドゥリル・インダストリーズは、「ラティスAI(Lattice AI)」と呼ばれるテクノロジーを開発している。ラティスAIは、センサーフュージョン、VR、機械学習を駆使して、兵士に周囲の視界を提供するように設計されている。同社のWebサイトによると、「ラティスAIは、立入禁止区域に入った車、人間、ドローン、その他の脅威を発見・識別・追跡できる」という。同社はまた、ラティス・システムの一環として、(上に掲載した画像のような)非常に簡単に飛ばせるドローン「ゴースト(Ghost)」も開発している。
米国政府および軍当局は、最新の技術を活用して技術開発サイクルを短縮しようと、シリコンバレーとの連携をますます求めるようになっている。だが、いくつかの企業は、とりわけ人工知能(AI)が関わる取り組みにおいて、米政府を支援する契約を結んだことで人々の反発を買った。もっともよく知られているのは、グーグルが従業員からの批判を受け、ドローンの撮影した画像を処理する米空軍のプロジェクトを支援する契約を終了せざるを得なくなった例だ。
ラッキーとアンドゥリル・インダストリーズはともに、投資家でありトランプ大統領のアドバイザーでもあるピーター・ティール、そして、ティールの投資会社ファウンダーズ・ファンド(Founders Found)および同氏が創業した、米国防情報局にビッグデータ分析ソフトウェアを提供する企業パランティア(Palantir)と親密な関係にある(ちなみに、「アンドゥリル」と「パランティア」という名はともに、J・R・R・トールキンの『指輪物語』に登場するアイテムに由来する)。実際、アンドゥリル・インダストリーズがペンタゴンと契約を結んだ今回の件は、米軍がシリコンバレーと連携することが分裂を招く政治的な問題であり、一部のテクノロジー企業が「得たり賢し」としているかを示している。