ビットコイン急騰、一頭の「クジラ」原因だった?
2017年のビットコインの価格急騰は、暗号通貨業界用語で「クジラ」と呼ばれるたった1人の大口ビットコイン保有者による市場操作が引き起こした可能性が高い——。ある研究チームが発表した論文はこう指摘している。 2017年1月には1000ドルに満たなかったビットコインの価格は、12月には1万9000ドル以上へと跳ね上がった。
テキサス大学のジョン・グリフィン教授とオハイオ州立大学のアミン・シャムス専任講師は2018年、論争の的となる論文を発表した。その内容は、2017年、それまで低迷していたビットコイン市場において、わずか2、3人の大口投資家がステーブルコイン(安定通貨)「テザー(Tether)」を使ってビットコインの価格を押し上げたと結論付けたものだ。 現在、グリフィン教授とシャムス専任講師は、その動きの背後にいたのは、たった1頭のクジラだった可能性が高いとブルームバーグに述べている。香港を拠点とする人気暗号通貨取引所「ビットフィネックス(Bitfinex)」に口座を持つ1人の投資家が、ビットコインがある一定のしきい値を下回ると、その価格を押し上げるようにしていた可能性があるという。
グリフィン教授とシャムス専任講師は、2017年3月1日〜2018年3月31日までの期間のビットコインとテザーのトランザクションを調査し、ビットコインの価格がある一定の刻みで低下すると、ビットフィネックスでのビットコインの購入が増加していることを発見した。ジャーナル・オブ・ファイナンス(Journal of Finance)誌に掲載される予定の論文を入手したブルームバーグによると、著者らは次のように結論付けている。「このパターンは、テザーが発行された後でのみ見られ、単体の大口投資家が操作しています。これは他の取引所では見られないパターンです」。
テザーのスチュアート・ヘグナー顧問弁護士はブルームバーグに対し、根拠となるデータが不十分であることを理由に、この研究には「基本的な欠陥があります」と語っている。
ビットフィネックスのオーナーはテザーの幹部を兼務していることから、論争が起きるのはこれが初めてではない。
2017年、米国商品先物取引委員会はビットフィネックスとテザーに対して召喚状を発行した。2018年5月には米国司法省が、ビットコインの価格操作に実際にテザーが使用されたかどうか捜査を始めている。 さらにニューヨーク州司法長官は、テザーとビットフィネックスを相手どり、8億5000万ドル相当の顧客資金と企業資金を喪失させた後、共同で隠蔽工作を画策したとして訴えている。