米国でELD設置が義務化、トラック運転手を守れるのか
まもなく米国のトラック運転手は、新しい技術を受け入れなくてならない。だが、これは始まりに過ぎない。走行時間を記録し、1日11時間までという運転時間の制限規制を確実に守らせるために、12月18日以降、米国政府はトラックに電子運行記録装置(Electronic Logging Device:ELD)の設置を義務付ける。
ELDメーカーのキャリアリスト(CarrierLists)によると、調査したトラック2300台中でELDをすでに設置している、または設置を検討しているトラックはわずか45%だという。要するに、タイムリミットまでおよそ1カ月しかない状態で、ELDを設置する検討すらしていない運転手が半分以上ということになる。運転手の中には規制に抗議し、スト決行を表明する人もいる。 ELD設置の義務化により、運転時間が制限されて収入が減り、おまけに長距離トラック用のドライブインでは大混雑が起きる、とも話している。
だが、この争いは無謀で非現実的だ。ELDはせいぜい些細な技術で、なんの邪魔にもならないからだ。そんなことに関わっている間に、トラック運転手たちは自動運転トラックという銃を突き付けられているのだ。2年前にELDの設置義務化が決定したとき、自動運転トラックなどまだはるか先の話だった(「2017年版ブレークスルー・テクノロジー10:自動運転トラック」参照)。今となっては、ELD設置の義務化は、トラック運転手が来たるべき変化に対してどれだけ脆弱な状況に置かれているかを際立たせているに過ぎない。1日に11時間しか運転できない人間と、ほぼ24時間走れる自動運転トラックとではは、まるで勝負にならないからだ。
変化は間違いなく近づいてきている。テスラは11月16日に電気セミトラック(分離している荷台を牽引するトラック)に関する発表をする予定で、プラトゥーン走行(複数の車両が車間距離を詰めたまま一つに連なって走行すること)ができる自律型電気トラックが現実のものとなる可能性があるからだ。2016年、無人トラック開発企業オットー(Otto)のトラックが初めて約193キロを走り、2000ケースのバドワイザーを運んだ。宣伝効果を狙った実験的なものだったが、オットーのリオール・ロン共同創業者は、今後10年間のうちに自動運転トラックが広く活用されるようになると確信している。
こうも言い換えられる。トラック運転手たちはELD設置義務化に対する2年の猶予期間中になんの備えもしなかった。そして、自動運転トラックに対する、10年という長い猶予期間はもうすでにスタートしているということだ。
- 参照元: CarrierLists、Trucks.com