ボーイングのスタライナーに深刻なバグ、大惨事の可能性があった
ボーイングの宇宙船「スターライナー(Starliner)」は昨年12月、宇宙への初飛行で国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングを試みたが失敗に終わった。米国航空宇宙局(NASA)の安全担当者はこの件について、ソフトウェアに複数の問題が生じたことが原因であり、以前に発表した以外にも不具合が存在していたことを明らかにした。実際のところ、この第2の不具合が同宇宙船に「大惨事」をもたらす危険性があったようだ。
まずは、以前に公表された不具合について説明しておこう。2019年12月20日のスターライナーの無人試験飛行ミッションでは、同宇宙船のエンジンが意図したとおりに燃焼しなかったことから、予定より早く任務を終了したことはすでに報道の通りだ。これは以前に報じた通り、内部タイマーの欠陥が原因だった。その結果、スターライナーはISSとのドッキングを果たせず、わずか48時間で地球に帰還した。NASAは現在、コンピューター・プログラムの誤りが原因で、スターライナーとアトラス V(Atlas V)ロケットとの間に11時間のズレが生じたと説明している。
今回NASAが明らかにした2つ目のプログラムの誤りは、スターライナーが地球の大気圏に再突入するための準備を司る一連の手順におけるものだ。もしこのエラーをほおっておいたら、スターライナーは誤ってスラスタを噴射していたであろう。その結果、動きを制御できなくなり、サービス・モジュールが乗組員用モジュールに衝突して、乗組員用モジュールの遮熱材を損傷したり、降下中に危険な宙返りを引き起こしたりしていた可能性があった。
この不具合は、スターライナーが地球に帰還する前夜に地上職員が把握して修正した。ボーイングの上級副社長であるジム・チルトンは、タイマーに誤りが生じたことをきっかけに、他にもスターライナーのソフトウェアに欠陥がないかをミッション・コントロール・センターで調べていなかったら、今回の不具合は発見されなかったろうと述べた。
NASAもボーイングも、ミッション中に問題の存在に気が付いたものの、前回の発表では、複数の問題が存在する可能性について一言も触れなかった。プログラムの誤りは、両当事者による複数回にわたる確認作業で認識されていたはずだと関係者は述べる。「私たちの監督が不十分でした」と、NASAの有人飛行の責任者であるダグ・ロベロは述べている。
NASAの独立調査委員会は、ボーイングのソフトウェア検証プロセスの全面的な見直しを勧告している。ボーイングは、100万行以上のコードにもなる全てのスターライナーのソフトウェアの再見直しを計画している。
同委員会は依然として、今回のミッションと宇宙船に関する独自の調査の最終段階にある。NASAは、これらの新事実が2020年度のスターライナー計画にどのような影響を及ぼすのか、スターライナーの有人飛行の前にISSへの無人試験飛行をもう一度実施する必要があるのかなどついて、いまだに何も方針を示していない。決定は2月末までに下されると見られる。