暗号通貨詐欺、2019年の被害額は43億ドルに=調査会社まとめ
暗号通貨詐欺師たちは2019年、前年の稼ぎの3倍以上となる43億ドル相当のデジタルマネーをかき集めた。ブロックチェーン分析企業のチェーンアナリシス(Chainanalysis)がまとめた。詳細は、1月29日に同社が発表した『The 2020 State of Crypto Crime(暗号通貨犯罪の状況:2020年版)』という長い報告書に記載されている。
チェーンアナリシスによると、詐欺師たちは、大多数の市民がいまだに「一攫千金」の可能性があるということ以外、暗号通貨についてよく知らないという事実につけ込んでいるようだ。詐欺には偽のトークンの販売や脅迫詐欺など、さまざまな種類がある。また、取引の追跡を困難にするためにユーザーのコインを他人のコインと「混ぜる」と約束しておきながら、最終的に持ち逃げする偽のサービスも存在する。
だが、今回の新しい報告によると、明らかに触れてはいけない話題になっているのが、ポンジ・スキーム(出資金詐欺)だ。この手の詐欺は、人々が気づかないうちに偽の会社に投資するよう誘い込み、直近に投資した人々が支払った資金から、初期の投資者に配当を支払うというものだ。暗号通貨詐欺の被害金額の92%を占め、数百万人が騙されている。
チェーンアナリシスの報告では、中国を拠点とする1件のポンジ・スキームだけで、昨年少なくとも20億ドルを稼ぎ出した。史上最大規模の1つに数えられるだろう。「プラス・トークン(PlusToken)」は、この偽会社のトークン「プラス(Plus)」をビットコインやイーサリアム(Ethereum)で買ったユーザーに高配当を約束する、架空の暗号通貨ウォレット・サービスだ。手の込んだマーケティング・キャンペーンにより、人気のメッセージング・プラットフォーム「ウィチャット(WeChat)」を経由したり、実際に会ったり、スーパーマーケットに広告を出したりして被害者との接触をはかり、300万人以上(大部分が中国や韓国、日本)からカネを集めた。
中国当局は昨年6月、この詐欺に関わったとされる6人を逮捕した。だが、いまだにマネーロンダリングを続け、現金化している者が存在することから、少なくとも共犯者の1人は捕まっていないと見られている。
チェーンアナリシスは、プラス・トークンの詐欺師たちが、盗んだビットコインのうち少なくとも1億8500万ドルを現金化したと述べている。だが、彼らはまず2万4000回の転送と7万1000のビットコイン・アドレスを使って痕跡を隠そうとした。これらの取引の多くは、「コインジョイン(CoinJoin)」という、ビットコイン互換の匿名送金技術を使った特別な種類のウォレットを経由して実行された。コインジョインはユーザーの取引を他者の取引と混ぜ合わせ、どの支払いが誰に送られたか分かりにくくする。このようにして集められた資金の多くは、最終的にいわゆる「OTC(相対取引)」ブローカーにたどり着く。OTCブローカーは独立した存在で、規制下にある取引所を利用したくない個人同士の取引を取り持つ。
こうしたルートを利用するのは、プラス・トークンの詐欺師たちだけではない。チェーンアナリシスは、暗号通貨のマネーロンダリング・サービスを提供した「ならず者」のOTCブローカーの小集団の活動が2019年に「急増した」と結論づけている。報告書では「規制当局はさらに効果的な消費者保護法を作るために、これらの詐欺がどのように機能し、OTCブローカーのような業者がどのように適応しているのか把握する必要があります」と警告している。新たな消費者保護制度が整うまで、警戒を緩めるべきではない。