KADOKAWA Technology Review
×

ニューズラインエマージング・テクノロジーの最新情報をお届け。

マイクロソフトがオープンAIに10億ドル投資、AGI開発へ
OpenAI
Microsoft is investing $1 billion in OpenAI to create brain-like machines

マイクロソフトがオープンAIに10億ドル投資、AGI開発へ

オープンAI(OpenAI)は、マイクロソフトのスーパーコンピューターとクラウド・コンピューティングの能力を投入して、汎用人工知能(AGI)の開発に取り組む。

マイクロソフトの発表によると、オープンAIは同社のアジュール(Azure)クラウドコンピューティング・サービス向けの新しいAIテクノロジーの共同開発とAIモデルの訓練を支援する。両社はAGIを実現するための新しいスーパーコンピューター(ハードウェア)の開発にも共同で取り組むという。このハードウェアは、人間と同じようにタスクを学習できる能力を持つ機械である。

AGIは、AI分野においていまだ達成されていない(もしかすると永遠に達成されないかもしれない)究極の目標だ。オープンAIの設立者であるイーロン・マスクなどのテック業界のリーダーたちは、気候変動から医療にいたるまで、さまざまな分野における長年の課題を解決するのにAGIが役立つかもしれないと考えている。

オープンAIは2015年の設立以降、「ドータ2(Dota 2)」のようなゲームで人間のプレイヤーを破ったり、驚くほど自然な文章を書ける言語モデル「GPT-2」を開発したりしてきた。安全なAGIの開発をミッションに掲げるオープン AIは、科学研究のための非営利の研究機関として始まったものの、AIモデルの訓練には一度に膨大なデータを処理する必要があり、大量の高価なコンピューティング能力が必要だ。そこでオープンAIは活動資金を得るために、今年初めに新たに営利部門を設立している(オープンAIはこれを「利益上限付き(capped profit)」モデルと呼んでいる)。

今回の投資はマイクロソフトの新戦略の一環であり、AIに大量の資金を投じているグーグルやフェイスブック、アマゾンなどのライバル企業と歩調を合わせるのに役立つ。

多くのAI研究者がAGIは達成不可能だと考える中で、オープンAIは新しい手法によってAGIを開発するのではなく、既存の深層学習手法を大規模にスケールさせることでAGIを実現しようとしているようだ。もしAGIが実現できるとしても、より強力なコンピューティング能力を投入することでそれが可能になる保証はない。マイクロソフトが投じる10億ドルは、間違いなく冒険的な賭けなのだ。

マーティン ジャイルズ [Martin Giles] 2019.07.24, 11:59
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューは有料会員制サイトです
有料会員になると、毎月150本以上更新されるオリジナル記事が読み放題!
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る