貿易戦争に新展開、米国が中国半導体メーカーに輸出制限へ
トランプ政権は中国との貿易戦争をエスカレートさせる、新たな爆弾を投下した。米国企業からの部品輸出を制限する企業のリストに、福建省晋華集成電路(JHICC)を追加したのだ。
今回の動きは、国際貿易における集積回路の重要性を浮き彫りにするものだ。さらに、トランプ政権における貿易政策が2つの主目的、すなわち「知的財産泥棒」であるとして中国に制裁を加えること、テクノロジー分野での中国の台頭を抑えること、を裏付けるものだ。
10月29日に公表された米国商務省の文書によると、増え続けるJHICCのメモリー・チップ生産量が、長期的に見て米国のチップ供給会社の経済的生存能力を脅かしているという。そうなると、米国の軍事システムが中国製技術に依存せざるをえなくなる可能性が出てくる。さらにJHICCは、米国企業マイクロン・テクノロジーから機密情報を盗んでいるとの非難も受けている。
JHICCに対する輸出禁止令は、ほぼ間違いなくJHICCの事業に大きな打撃を与えるだろう。トランプ政権は2018年4月にも、中国の通信機器メーカーであるZTEに対して米国のマイクロチップの輸入を禁じている。このときは、イランや北朝鮮へ技術を不正に輸出していることが理由とされた。その後、トランプ政権が制裁措置を解除するまで、ZTEは大きな打撃を受けた。
集積回路は貿易戦争の中核となっているが、その理由の1つに、中国が集積回路の輸入に関して、米国に大きく依存していることが挙げられる。中国のマイクロチップの輸入額は石油のほぼ2倍であり、その約半分が米国からの輸入品だ。
トランプ政権はマイクロチップを貿易戦争の強力な武器と考えているが、同時に中国のチップ製造技術が向上し、将来的に米国最大の輸出産業の1つに対抗する存在となることを恐れている。マイクロチップは高度な軍備システムやスーパー・コンピューターにとっても重要な存在であり、トランプ政権にとっては中国のチップ製造能力の向上によって軍事力が増強されることも懸念材料だ。