少ない訓練で指思い通りに、広島大ら新型「筋電義手」開発
人工知能(AI)に基づくアプローチで制御できる3Dプリント製の新しい義手は、肢切断者ためのバイオニック義肢にかかる費用を大幅に低減できる可能性がある。
米国には約54万人の上肢切断者がいるが、筋収縮で操作できる高性能な「筋電」義手は、依然として非常に高価だ。筋電義手は、2万5000ドルから7万5000ドルほどの費用がかかる上に(メンテナンスや修理費用を除く)、ソフトウェアが異なる筋の動きを識別することは容易ではないため使いにくい場合がある。
日本の研究チームは、より安価で高性能な筋電義手を考案した。開発された5本指の3Dプリント製の義手は、研究チームが「筋シナジー」と呼ぶ複合合成信号を認識するように訓練されたニューラル・ネットワークを使って制御できる。この筋電義手の詳細は、6月26日、サイエンス・ロボティクス誌で発表された(日本版編注:広島大学による発表)。
研究チームは、1人の上肢切断者を含む7人を対象に、開発した義手の試験を実施した。試験の参加者は、約90%の精度で10種類の手指動作ができた。その上、10種類の手指動作のために必要な訓練は、各指に対してたった5種類だった。試験に参加した上肢切断者は、ビンを持ち上げたり降ろしたり、ノートを広げるといった複数の動作ができた。
このようなテクノロジーが義肢のコストをどれだけ低減できるかはまだ明確ではない。現実世界の多種多様な動きをソフトウェアに認識させるのに必然的に伴う筋疲労や複雑な問題など、克服すべき重大な課題もまだ残っている。それでも、使いづらかったり極めて高価だったりする義肢に頼る人々の人生を、いつの日か変える可能性のある有望なアプローチだ。