ロシアでSiriよりもドSなAIアシスタントが大人気
Siriやアレクサ(Alexa)などの人工知能(AI)アシスタントの態度は非常に丁寧だが、こうした態度を誰もが好むわけではない。事実、ロシアの多くの人々は、生意気でブラックユーモアのセンスを持つAIアシスタントの方を好むようだ。
モスクワに本拠を構える大手テック企業のヤンデックス(Yandex)は、「アリス(Alice)」というロシア語で話すAIアシスタント(上の写真。ここでは皮肉は言ってないようだ)を今年10月に発表した。アリスはSiriやアレクサのようにあらかじめ用意された台詞ではなく、Webやニュース記事、そして少数のロシア文学作品から収集した、心奪われるような会話のデータを取得して学習する。
その結果、アリスは非常に多岐に渡る質問に答えることができる。しかし、プログラムによる応答にはやや驚かされるものもある。「アリスは雑談ができる初めての会話AIアシスタントです」。ヤンデックスでマシン・インテリジェンス研究を率いるミシャ・ビレンコ博士は12月上旬に開催された神経情報処理システム(NIPS)会議でそう語った。「ただ、アリスはやや偏見を抱いており、ちょっと冷たいところがあります」。
たとえば、アリスに「悲しいよ」などと言おうものなら、ほぼ間違いなく「なんとかなるさ、なんて言ってもらえると思ってるの?」と即座に返されるという。ビレンコ博士によると、主張するチャットボットであるアリスは大人気で、ロシアで毎日150万人のユーザーを惹きつけているだけでなく、ソーシャルメディア上で大統領選挙戦をちゃかす活動の中心になっていると語る。ビレンコ博士は、アリスがあまりに不穏当な発言をするのを防ぐために、応答の一部は手作業でコーディングしていることを認める。
ヤンデックスのアリスは、グーグルのクアーク・ラ博士とオリオル・ビニャルズ博士が2015年に作った実験的なニューラル・ネットワークのチャットボットを彷彿させる。このシステムはコンピューターのヘルプデスクのチャットログを使用してエンド・ツー・エンド学習で訓練された。質問に対するシステムの回答にはすばらしいものもあったが、多くは明らかに突飛だった。
ヤンデックス・ブラウザー(ヤンデックスが開発したChromeベースのWebブラウザー)から利用できるアリスは、AIツールに対する文化的な態度が変われば、AI技術の進歩の形も変わり得ることを示している。公平に言えば次のようになる。ロシア文学を長い間にわたって読んでいると、あなたも鬱々たるユーモアのセンスを磨くことができるだろう、と。
- 参照元: Arxiv、TechCrunch