電動航空機までの「つなぎ」にハイブリッドが有効、温暖化対策で
電動航空機が飛ぶには、まだ何十年もかかるだろう。だから、航空機からの二酸化炭素排出量を削減する方法も考えた方がいい。
航空機は急速に増加している二酸化炭素汚染源の1つであり、地球温暖化の原因となる他の微粒子も放出するため、温暖化に非常に大きな影響を及ぼしている。とはいえ、現時点では空の旅をやめる以外に、汚染をなくす代替策は見あたらない。
ボーイング737やエアバスA320を電動化することの大きな問題の1つは、あれだけ大きな機体を長距離にわたって飛ばし続けるのに必要な電池の重量だ。最近、ネイチャー・エナジー( Nature Energy)に掲載された論文によると、小型ジェット機クラスの機体には少なく見積もっても、800Wh/kg(1キログラムあたりのワット時)の比エネルギーの電池パックが必要だと分かった。
これは現在の最新型リチウム・イオン電池の4、5倍大きな数字であることが、2月11日付のネイチャー・サステナビリティ(Nature Sustainability)で新たな意見論文として発表されている。
論文の著者である、カーネギーメロン大学のバッテリー専門家ベンカット・ヴィスワナータン助教授と、ハイブリッド飛行機のスタートアップ企業「ズーナム・エアロ(Zunum Aero)」の創業者であるマット・ナップ主任技師は、リチウム・硫黄やリチウム・酸素といった次世代電池でさえその限界に達することはできないだろうと述べる。さらに、大型航空機を電動化するには、電気モーター、パワー・エレクトロニクス、バッテリー放電率、そして基本的な空気力学設計などの大幅な改善が必要になるだろう(「航空機「電化」に賭ける夢、 高出力の新電池開発を目指す 材料科学者たち」参照)。
これらを総合すると、「実用可能な完全電動航空機」に要する技術的進展までには何十年もかかるだろうと、論文著者らは述べている。
だが、それまでの間に航空機の排出を改善する方法は始められると論文著者らはいう。多くの企業が、短距離飛行用の1、2人乗り完全電動航空機や、何百キロメートルもの飛行が可能なモーターとガスタービンのハイブリッド航空機を開発しつつある。その1社が、12人乗りの「ハイブリッドから電動」航空機の2022年の完成を目指す、ズーナム・エアロだ(ヴィスワナタン助教授はズーナムの技術コンサルタントを務めている)。
排気量の少ない航空機が地域航空市場の一部で導入され始めれば、好循環が生まれるはずだ。市場におけるたった1つの「偉大なる技術躍進」よりも、ハイブリッド航空機への小さな前進の方が投資家にとっては魅力的であり、優秀な研究者たちを引きつけることにもなるだろう。それが段階的な進歩に対する支援になるとと論文の著者たちは訴えている。非常に重要なことは、そうした動きによって研究者や規制当局が、バッテリー駆動の航空機にまつわる困難な安全対策や冗長性、認可といった問題についても取り組むようになっていくことだ、とヴィスワナータン助教授はインタビューで述べた。
電池の性能が向上し続ければ、航空機はより長距離を飛べるようになり、さらに多くの乗客を運び、航空産業の二酸化炭素排出量を大きく減少させるはずだ。
もちろん、地球温暖化や、航空機による二酸化炭素排出量の増加が急速に進んでいることを考えれば、航空産業の浄化までに何十年も待つというのはあまりにも長すぎる。その代替手段についても真剣に考える必要がある。たとえば、カーボン・ニュートラルな燃料や大気中から温室効果ガスを除去する手段を考えること、そして人や物を移動させる手段について根本的に考え直すことだ。