米北部襲う巨大ハリケーン、テクノロジーにできることは?
大西洋で発生した巨大ハリケーンで「生命を脅かす高潮」や「壊滅的な鉄砲水」が発生する恐れがある——。米国立ハリケーン・センターが警戒を呼びかけている。
「ハリケーン・フローレンス」が勢力を保ったままサウスカロライナ州およびノースカロライナ州の沿岸に上陸すれば、米国北部に上陸する史上初のカテゴリー4のハリケーン(風速59〜69メートル毎秒の大型ハリケーン)となる。すでに150万人を超える住民に避難命令が出されている。
ハリケーンによる年間被害総額が史上最高を記録する中、接近中のハリケーンはある疑問を提起する。気候変動はこうした気象事象にどう影響しているのだろうか? 増大していく危機を、テクノロジーで回避することはできるのだろうか?
ある特定の気象事象を気候変動と直接的に関連付けるのは難しい。だが科学者らが、気象条件の変化がハリケーンや異常気象を悪化させているという警告を長年に渡り発しているのは、MITテクノロジーレビューで以前から紹介している通りだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の大気科学者であるケリー・エマニュエル教授は、米国科学アカデミー紀要で自身の論文を引き合いに出し、 世界が二酸化炭素排出量を削減しなければ、「ハリケーン・ハービー」と同等のハリケーンが発生するリスクが「20世紀後期から21世紀初期と比べて10倍に増加する」だろうと述べた。ハリケーン・ハービーは昨年、何十人もの死亡者と数千人の避難民を出した大型ハリケーンである。
できるだけ速やかに温室効果ガスの排出を切り詰めれば、これ以上の危機の増大を食い止める一助となるかもしれない。だがそれには10年単位の時間が必要だろう。すなわち我々は、ハリケーン予報の改良や海岸線の補強といった被害軽減策、災害対応に力を入ればならないということだ。
科学者らは、ハリケーンを弱めたり回避したりできる可能性がある技術的な手段の研究に取り組んでいる。たとえば、海に浮かべて海水を撹拌することで水温を低下させる波力ポンプや、海上の雲を明るくすることで熱反射率を高める地球工学の手法などが研究されている。しかしこういった分野の研究はまだ初期段階にあり、特に潤沢な資金も充てられてはいないし、環境への二次的影響も明らかになっていない。