脳インターフェイスで「3本目の腕」を操作、身体能力を拡張
脳で操作する実質現実(VR)ゲームや、思考をテキスト・メッセージに変換するインターフェイスなど、脳を使ってコンピューターを操作する脳機械インターフェース(BMI)への期待がここ数年、高まっている。フェイスブックやイーロン・マスクCEOも高い関心を示しており、いずれマウスやキーボードのいらないコンピューティング環境が実現するかもしれない。
とはいえ、現在のところBMIは、障がい者がコンピューターを限られた範囲で操作するインターフェイスとして主に使われているのが現実だ。そうした中、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の西尾修一主幹研究員らのグループが取り組んでいるのが、BMIとロボットアームを使って人間の身体能力を拡張する研究である。
西尾研究員らのグループはこのほど、脳で考えるだけでロボットアームを操り、「3本目の腕」として機能させる方法を開発した。ボールが乗った板を両手で持ち、ボールが落ちないようバランスを取りながら差し出されたペットボトルをロボットアームで掴む実験を実施したところ、参加者15名のうち8名がうまく操作できたという。通常、BMIでは「右手を動かす」といった運動イメージを測定するが、今回のように「存在しない手」を想像するのは難しいため、「差し出されたペットボトルをつかむ」といった意図をBMIで測定、検出できるようにすることで実現したという。
研究チームでは今後、さまざまな意図を区別して制御できることを目指すほか、今回の手法を使って訓練することで人間のマルチタスク能力の向上にも役立つのではないか、と述べている。
- 参照元: 科学技術振興機構