カザフスタンがHTTPS通信を傍受、国民に証明書導入を強制
カザフスタンの新たな独裁政権はいま、先進的な技術ツールを用いることで、21世紀も古臭くて圧政的な支配体制を存続させようとしている。
ZDネット(ZDNet)によると、カザフスタン政府は7月17日から国内のすべてのHTTPSトラフィックを傍受しているという。HTTPSは、暗号化、セキュリティ、プライバシーをユーザーに提供するプロトコルだ。だが、カザフスタン内のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)は現在、傍受と監視を広く可能にする証明書のインストールをすべてのユーザーに強制しているという。
7月18日には、政府のルート証明書をWebブラウザーにインストールするよう指示するページにリダイレクトされるようになった。この証明書はインターネット・トラフィックの「中間者」傍受や、暗号の復号、監視を可能にするものだ。
認証局であり、ブラウザーの開発元でもあるグーグルとマイクロソフト、モジラに対して、監視目的でインターネット・トラフィックを再暗号化するカザフスタンの取り組みへの対処を尋ねたが、現在のところ回答は得られていない。
ほとんどの米国人は、地図上でカザフスタンの場所を見つけられないだろう。だが、カザフスタンの最近の動きは、幅広い影響を及ぼすことが予想される。
カザフスタンが位置しているのは、21世紀にも着実に残る独裁者によって支配されている地域だ。カザフスタンのすぐ隣には、近隣諸国と同様に、国民を支配する手段としてインターネット監視を強めている圧政的な独裁国家、トルクメニスタンがある。
カザフスタンの中間者傍受計画は、カザフスタン政府がインターネットを介して国の支配を強化する唯一の動きではない。カザフスタン政府は、イスラエルのNSOグループの有力な顧客でもある。NSOグループは、独裁国家を含む世界中の政府に反体制派を潰すためのハッキング技術を提供する企業だ。NSOグループの技術は通常、一度に1人の人物のみを標的する。カザフスタン政府の技術的な野心はいま、明らかに高まっていると言える。
1991年のソ連崩壊から2019年まで、カザフスタンは1人の独裁者が支配を続けてきた。ヌルスルタン・ナザルバエフである。2019年になって新たな大統領が権力を握ったが、この指導者交代はほとんど意味をなしていない。
2019年の大統領選でのカシムジョマルト・トカエフの勝利は、何百人もの反体制派の拘留から始まった。
大統領選わずか数カ月で、テクノロジーを利用してカザフスタンの支配をさらに強めようとするトカエフ大統領の試みが意味するのは、ナザルバエフからトカエフへの権力移行だけではない。古くさい独裁者体制から、今日のテクノロジーを自らの意思によって捻じ曲げることができる、21世紀型の独裁者体制への移行がスムーズに行なわれる可能性を意味しているのだ。