ZOZO前澤社長ではない私が「宇宙旅行」へ出かける6つの方法
バージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)やブルーオリジン(Blue Origin)といった企業が、近々観光客を宇宙へ送り出すと主張するたびに、私はあきれた気持ちになる。もちろん宇宙へ行く人の数は増えるだろうが、それは私たちのような一般市民ではない。百万長者でもない、私のように子どもの頃宇宙飛行士に憧れた者(そうなの、驚いた?)にとって、宇宙へ行く可能性はいまだに果てしなく遠い夢物語のようだ。しかしどのくらい遠い話のか? 私のような人がどうすれば宇宙へ行けるのか、そしてあとどのくらい待てば実現するのか? ちょっと調べてみた。
そもそも、宇宙へ行く人をもっと増やす必要がある
宇宙観光会社は時期を得るのが得意ではない。バージン・ギャラクティックは、何年も期限延長を重ねたあげく、2018年にようやく初の有人宇宙飛行に成功した。スペースX(SpaceX)は、2018年末までにファルコン・ヘビー( Falcon Heavy)というロケットで2人の人間を月へ送るという計画を取りやめている。それよりもスターシップ(Starship=かつてBFR/ビッグ・ファルコン・ロケットと呼ばれていたロケット)に観光客を乗せようというわけだ。
しかし宇宙の星たちは、ついに人間の宇宙旅行に同調してくれるようだ(あぁ、なんて言い回しだこと)。ブルーオリジンは現在のところ観光用ロケットの試験飛行を10回実施しており、今年の年末までに人間を宇宙へ送り出す計画だ。バージン・ギャラクティックは今年は今まで以上にテスト飛行を重ね、共同創業者のリチャード・ブランソンを2019年半ばまでに宇宙へ送り出し、商業用飛行の皮切りとする予定だ。スペースXは最初の月旅行者を発表した。億万長者の日本人実業家、前澤友作である。間もなく一般市民が宇宙へ行けるようになるということが、実に現実的に思われてくる。まあ、お金を持っていれば、の話だが。
お値段
実は、2000年代初頭からロシアのロケットで観光客が宇宙へ行っている。しかしそのお値段たるや、2000万ドルから4000万ドルという高額なものだった。バージン・ギャラクティックによる宇宙飛行は、それに比べれば(ほとんど)超お買い得品のように思われる。バージン・ギャラクティックではすでに700人が順番待ちをしており、宇宙飛行に20万ドルから25万ドルの代金を支払う用意をしている。スペースXとブルー・オリジンのお値段は発表待ちだ。
飛行機レベルまでコストを下げる
私の銀行預金でまかなえる金額で、宇宙へのチケットを手にいれるにはどうしたらよいだろうか? 確かに最初に宇宙へ行く観光客は全員金持ちだろう。しかし、飛行機の旅も同じようにして始まったのだ。つまりリスクを伴っていたし、高額だった。ただし、航空料金と同じくらいのペースでコストが下がることは期待しないでほしい。宇宙旅行の需要は飛行機とは比較にならないほど低いのだから。ピュー研究所(Pew Research Center)の調査によると、ほとんどの米国人は宇宙旅行に関心すら持っていない。しかし、すでに宇宙旅行のコストは下降線をたどり始めている。
財政面から考えると、価格を下げることは宇宙観光会社の利益になる。「宇宙観光会社が儲けるには2つの方法があります。1つの現実的な方法はチケットの前売りです」とマサチューセッツ工科大学(MIT)航空宇宙学科のマーカス・ゲールスター博士は話す。「もう1つの方法は、たとえば、200万ドルといった高い値段から始め、喜んで大金を払おうという大金持ちへ販売するのです。そして大金持ちが全員宇宙へ行ったあとに値段を下げるのです」。競合他社がますます市場へ参入してくるにつれて、冷やかしで参入した企業は淘汰され、企業は実力を競い合うようになりコストは間違いなく下がっていく。どんなことでもそうだが、最初の人が一番高い費用を払うことなる。
現段階で、できるだけ早く私たちが宇宙へ行くための選択肢は以下の6つである。
1. 費用を誰かに出してもらう
非営利団体のスペース・フォー・ヒューマニティ(Space for Humanity)は、普通なら絶対に行く機会のないような人々に対して、宇宙旅行を無料で提供するという。宇宙旅行により一層の多様性をもたらすことで世界中の人々のための手本となり、これまで無関心だった人々へ宇宙への関心と興奮を広めたいと考えている。この団体は資金源をまだ明らかにしていないが、レイチェル・リヨンズ常任理事によれば目標は今後2年間で6人から8人の人に宇宙へ行ってもらうことだ。また、将来展望についても彼らは進んで語っている。「(スペース・フォー・ヒューマニティは)宇宙旅行のチケットの最多購入者になるつもりです」とリヨンズ常任理事は胸を張る。そうであれば、どうしたらその1枚を手に入れられるのか? Webサイトで申し込めばいいのだ。やってみる価値はあるのでは?
2. 影響力のあるアーティストになる
うーん、これは確かにニッチな手段だ。ところがスペースXの最初の乗客、前澤友作は1席だけではなく、ロケットを丸ごと買い占め、他の人間をタダで乗せてやろうとしている。宇宙への旅の経験を共にするアーティストを引き連れて行こうと考えているのだ。もし他の初期の乗客たちも、チケットを買うお金のない私たちのような人間をできるだけ同行させようと計らってくれるなら、宇宙への旅の機会均等化に貢献するかもしれない。
3. 宇宙観光会社に就職する
ブルーオリジンは、お金を払って乗る客を宇宙旅行に連れ出す前に、自社の従業員を宇宙へ送り出すことを考えている。ブルーオリジンに就職すればタダで宇宙旅行ができるかもしれない。
4. 国の宇宙飛行士になる
昔ながらの方法をとればよいではないか? 宇宙が本当に大好きなら、宇宙飛行士候補になるのに必要な学位を取るのは、宇宙旅行のチケットを買うよりもおそらく安く上がりなはずだ。
5. お金を払う
費用をケチって10万ドルを事業歴の浅い宇宙観光会社へ払うくらいなら、名の通った会社を選ぶことをおすすめする。あまりに安く売っている企業は事業がはかばかしくないからだ。XCORは最安値の宇宙行きのチケットを提供していたが、倒産して何百人もの人が10万ドルを失った。宇宙どころの話ではない。また、気球を使ったスタートアップ企業のワールドビュー(2016年に記事で取り上げた)などのような代替手段の提供者は、もっと収益性の高い方法を求めて宇宙観光計画を延期している。
6. コストが下がるのを待つ
そうそう、分かっている。現実的になること、そして忍耐だ。宇宙へのチケットがいまは買えないというなら、5年後にもう一度問い合わせてみることだ(おそらくその間に貯金もできているだろう)。ゲールスター博士は、ある企業が5人以上の乗客を乗せて約1000回飛行すれば、その後は価格を半分にできると予測する。半額であってもお小遣い程度というわけにはいかないが、50%引きにしてくれるなら私はいますぐにでも手を挙げる。価格を下げることは避けられない。そうしなければ誰も宇宙へ行こうなどとは思わないからだ。「大金持ちは一度宇宙へ行ったら、もう二度と行きたいとは思わないでしょう」とゲールスター博士は話す。「宇宙へ行きたいという顧客が増えるには、次の世代を待たなければならないかもしれませんね」(ゲルスター博士)。