「顔認識APIは提供しません」グーグルが宣言、倫理面に配慮
グーグルは、悪用防止に向けた方針が確立がされるまで、顔認識APIを提供しないことをブログで発表した。
この決定が、アジアにおけるグーグルの人工知能(AI)ツール利用に関するブログで発表されたことは重要である。中国では多くの巨大AI企業によって、顔認識の利用が急速に広がっている。中国の顔認識ツールは政府のIDデータを使って作られており、当局は顔認識ツールを犯罪者を発見したり反政府活動家を追跡したりするのに活用している。
今回のニュースは、監視や抑圧の道具としても利用される顔認識には規制が必要だと非営利団体のAIナウ(AI Now)が報告した直後に起きた。AIナウは「米国、中国をはじめとする世界中の多くの国で、広範囲な監視におけるAIの役割は大きく拡大しています」と警告している。
グーグルで国際問題を担当するケント・ウォーカー上級副社長は、「複数の利用方法が想定されるさまざまな技術同様、顔認識が私たちの原則や価値観に則って使用されるようにするとともに、濫用や有害な結果を生まない方法で使用されるよう慎重に検討すべきです。私たちは、こうした諸問題を見出し、対処するため多くの組織と引き続き協力します」と述べている。
グーグルによる動きは確かに称賛に値する。グーグルはAIを倫理に則った方法で開発すると述べているものの、軍にAIを提供していることですでに強い批判にさらされている。結局のところ、グーグルは顔認識の普及と使用の抑制について、ほとんど何もしないだろう。そして、アマゾンやマイクロソフトといった他の多くの大手米国企業が、顔認識ソフトウェアを躊躇なく提供するにちがいない。加えて、ギットハブ(Github)を検索すれば、顔認識システムを1から構築するためのツールを簡単に見つけることもできる。
AIに対する倫理面での懸念が高まるにつれ、倫理的基準について国際的な議論が必要だと主張する国もある。そうした議論が始まれば、顔認識は当然ながら重要な議題の1つになるはずだ。とはいえ、すでに中国で顔認識技術が広く利用されていることを考えれば、厄介な議論になるかもしれない。