二足歩行ロボ撤退、アルファベットがロボット事業再構築へ
アルファベット(グーグルの親会社)は、二足歩行ロボットの開発という野心的なプロジェクトの中止を決めた。このロボットは、2013年に買収した日本企業「シャフト(Schaft)」によって開発が進められていた。
アルファベットの方針転換は、ロボット革命が当初考えられていた以上に時間がかかることをアルファベット自らが認めた一例だ。アルファベットは話題を集めたロボット企業ボストン・ダイナミクスを2017年にソフトバンクへ売却した。だが、それはロボットのより実用的な用途に的を絞っていくという、1つの計画を示しているのかもしれない。たとえば、従来のロボット・アームを使った製造作業や、倉庫での商品ピックアップなどの用途だ。
東京大学の井上博允研究室のスピンアウトであるシャフトのロボットは、非常に高性能なものだった。革新的なアクチュエータ、冷却システム、制御用ソフトウェアを特徴とし、DARPA(米国国防先端研究計画局)ロボット工学チャレンジで優勝している。2013年に開催されたこのコンテストでシャフトのロボットは、はしごを登るなど数種類の無謀ともいえる作業において、卓越した敏捷性と確実な足運びを実演してみせた。
人間との協働作業が可能なロボットの開発に取り組んできたリシンク・ロボティクス(Rethink Robotics)が廃業に追い込まれたこともあり、ロボット市場が低迷していくという見方もあるだろう。だが、全世界的な産業用ロボットの売上が示す通り、そんな気配は一向にない。シャフトのロボットは2度目のチャレンジから撤退させられたわけだが、競合他社がいままでずっと経験してきたあらゆる苦労を見れば、こうした高度な二足歩行のロボットが商用化されるまでにはいかに時間がかかるか想像に難くない。
グーグルは2013年、有名かつ有望なロボット企業数社をプロジェクトの一環として買収した。プロジェクトは内部ではレプリカント(Replicant)と呼ばれ、アンドロイドの携帯電話用オペレーティングシステムの影の立役者アンディ・ルービンが中心となっていた。ルービンは2017年に、世間を騒がしたある事情によってグーグルを去り、ロボット・プロジェクトは以来悪戦苦闘している。
ロボット工学は復興するという、アルファベットの認識は正しい。しかし、レプリカントの試みは、彼らが結集していた技術からしても野心的すぎた。構造化されていない環境の中で働くことのできる二足歩行ロボットは極めて貴重だが、この分野の研究は恐らく大学の研究室の方がふさわしいだろう。
それでもまだ、アルファベットはロボット工学に大きな期待を持っている。実際、いくつかの重要なプロジェクトに取り組んでおり、産業用ロボットに複雑な作業を並行してさせる試みもその1つだ。従来のロボットのハードウェアと最新鋭の機械学習とを組み合わせようという、数多くの商業的試みのほんの一例に過ぎない。試みは非常に困難なものではあるが、やがてロボット産業を根本的に変えていくものでもある。