グーグルの「AI倫理委員会」、設置発表から1週間余りで解散
グーグルは3月下旬、人工知能(AI)プロジェクトを倫理面で指導する第三者委員会を設置することを発表した。しかし、委員会が存続したのは発表から1週間余りに過ぎなかった。4月4日、同社は委員会の解散を発表した。何千人ものグーグル社員らが、ある委員会メンバーの解任を求める請願書に署名したことが原因だ。
「先端テクノロジー外部諮問委員会(ATEAC:Advanced Technology External Advisory Council )」と呼ばれる第三者委員会は、当初計画ではグーグル内の「AIプロジェクトの責任ある発展を指導する」ために設立された。委員会のメンバーは8人で、テクノロジスト、哲学者、経済学者が含まれており、4月以降、年4回の会議を開き、グーグルのAIプロジェクトに関する意見をまとめた報告書を提供することになっていた。委員会メンバーの1人であるカーネギーメロン大学のアレサンドロ・アクイスティ教授は、メンバーを辞任することを発表済みだ。ボックス(Vox)の報道によると、グーグルは委員会全体を解散し、計画を最初からやり直すつもりだという。
懸念の中心となったのは、ヘリテージ財団のケイ・コールズ・ジェームズ所長が委員会のメンバーに含まれていたことだ。ヘリテージ財団は地球温暖化に懐疑的であり、ジェームズ所長は個人としてLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア )の権利保護に反対論を唱えている。さらに、軍需産業向けにドローン技術を開発するトランブル(Trumbull)のダイアン・ギベンズ最高経営責任者(CEO)が委員会メンバーに含まれていたことも物議を醸した。軍への技術提供は、グーグル内でデリケートなテーマとなっている。
グーグルの広報担当者は、ボックスに対し次のように語った。「現在の状況では、先端テクノロジー外部諮問委員会が、当社の求める役割を果たせないことは明らかになりました。そのため、当社は委員会を解散し、計画を最初からやり直す予定です。AIが提起する重要な問題についても、責任を持って取り組みを続け、こうしたトピックスに関する外部からの意見を得るためのさまざまな方法を見い出す所存です」。
グーグルの発表は、AI倫理委員会が何らかの形で復活するかもしれないことを示唆しているが、グーグルが次回も同じアプローチを試みるかどうかは明らかでない。しかしAI倫理委員会を設置するのであれば、前回より慎重な人選が必要になりそうだ。