血友病患者への遺伝子療法、臨床試験の経過は良好
血友病で苦しむ人に安全で設計し直されたウイルスを注入することによって、体内に欠けている血液凝固因子を患者の肝臓に作らせることが可能になる。
血友病Bの患者は、血液を凝固させるたんぱく質である第IX因子を作り出すのを助ける遺伝子が欠けており、小さな出血ですら止血するのが難しい。スパーク・セラピューティクス(Spark Therapeutics)が開発している有望な遺伝子療法は、欠けている第IX因子の遺伝子を運ぶウイルスを注入することにより、問題の解決を約束する。少数の患者で試した初期の結果は期待できるように思われた(「Gene Therapy Is Curing Hemophilia」を参照)。
現在、ささやかな規模の臨床試験が実施されており、スパークが本当にいいところに目をつけたのかもしれないことが示唆されている。 ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)に掲載された結果では、10人の血友病患者が欠けている遺伝子を肝臓へ運ぶように編集されたウイルスを体内に入れる治療を受けた。治療の18カ月後、平均すると、患者の肝臓は正常水準の34%の量にあたる血液凝固因子を作っていた。この数値は低いように聞こえるかもしれないが、9人の患者は出血がなくなり、8人の患者は定期的な血液凝固剤の注入が必要なくなったのだ。
この療法にはまだいくつか疑問が残っている。まず、臨床試験の規模がまだ小さいので、この治療が本当に有効であると示されるまでに、もっと多くの試験が必要になる。今回の試験における18カ月を超えたあと、効果がどのくらい続くかという別の大きな懸念もある。一度の治療で済めばよいが、効果を持続させるためにもっと必要となるかもしれない。 遺伝子療法の高額な費用を考えると、生涯にわたって複数回の治療を実行するのには適さないかもしれない。