英精神科医団体がSNS企業にデータ共有を提言、自殺防止研究のため
自殺や自傷行為に走る若者を減らす研究のために、ソーシャルメディア企業はユーザーに関するデータや自社製品の利用に関するデータを共有すべきだ——。英国王立精神科医学会(Royal College of Psychiatrists)は新しい報告書でこう提言している。
英国の精神科医を代表するこの団体は、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムに対し、ユーザーが閲覧しているデータの種類やプラットフォームで費やしている時間といったデータの提出を義務付けるよう政府に求めている。報告書は、大部分の子どもや若者はネガティブな影響なしにテクノロジーの恩恵を受けられるものの、中には使わざるを得ないと感じたり、精神的な苦痛を感じたりするユーザーもいると指摘。同団体は共有されたデータはすべて匿名化して扱うとしている(だが、確実な匿名化はそれほど簡単ではない)。
英国政府は現在、独立したネット規制機関の設立を進めている最中だが、同報告書はデータ提出をソーシャルメディア企業に命じる権限をこの規制機関に与えるべきだとしている。さらに、同じく英国政府が導入する予定の「デジタル・サービス税」(大手テック企業の英国国内での売上の2%に課税)の課税対象を国際取引に拡大し、一部をこうした研究の資金に当てることも提案している。
有害なソーシャルメディア・コンテンツの閲覧と若者の自傷行為、さらには自殺の間に関連があり、その関連について研究者が深く理解できれば間違いなく有益だろう。だが、テック企業がこのようなデータを共有する可能性は低い。共有するための積極的な動機はほとんどないし、もし共有すればリスクにさらされる恐れがあるからだ。たとえば、提出したデータから個々のユーザーが特定されたり、あるいは研究で判明した内容によってユーザーに法的処置を取られたりするかもしれない。
2年近く前、アップルの投資家2人が同社に公開書簡を送り、考えうるデジタル・テクノロジーの悪影響から子どもを保護するための活動を強化するように求めた。だが、結果として、変化はほとんどなかった。スクリーンタイム(画面閲覧時間)と子どもを巡るあらゆる混乱と、心の健康の悪化との因果関係を示す証拠は極めて少ない。つまり、スマホによって子どもが心配性になったり落ち込んだりしているのではなく、気分が落ち込みやすい心配性の子どもがスマホの使用時間を増やしている可能性があるのだ。