フェイスブックがロビー会社と契約、暗号通貨「リブラ」実現へ本腰
フェイスブックが提案するデジタル通貨、リブラ(Libra)に関するここ数日の相次ぐ出来事により、プロジェクトの将来を巡る政治的な争いの第2ラウンドの準備が整った。フェイスブックは投資家に対し、一層厳しくなる規制当局の監視によってリブラが提供されない可能性があるとすでに認めている。だがそのわずか数週間後、フェイスブックはリブラの実現へ向けていよいよ本腰を入れたようだ。
もっとも重要なのは、フェイスブックが「ブロックチェーン政策に関する問題」に重点的に取り組むロビー会社を雇ったことだろう。フェイスブックは2018年に1300万ドル、2019年はこれまでのところ750万ドルをロビー活動に投じている。さらに今日、フェイスブックはワシントンDCを拠点とするFSベクター(FS Vector)をロビー活動に加えた。FSベクターは法規制・コンプライアンスとビジネス戦略に特化したコンサルティング会社で、共同経営者であるジョン・コリンズは、米国で人気の暗号通貨取引所「コインベース(Coinbase)」で政策責任者を務めた経歴を持つ。
2019年6月にフェイスブックがリブラの立ち上げを発表すると、すぐに世界中の政策立案者や中央銀行は懐疑的な見方を示した。セキュリティ、プライバシー、金融の安定性に対する潜在的リスクに懸念を表明したのだ。通貨の管理方法の詳細が不明なことに対しても批判が集まり、フェイスブックは振り出しに戻されてしまった。だがいま、議論は次の段階へ進む準備が整ったようだ。
リブラは米共和・民主の両党の議員から火がついたが、特に批判的だったのが米下院金融サービス委員会のマキシン・ウォーターズ委員長た。先週末、ウォーターズ委員長はスイス政府当局者と会談し、リブラについて話し合ったという。フェイスブックによると、リブラはスイスに拠点を置く非営利団体「リブラ協会(Libra Association)」によって管理されるとされている。ウォーターズ委員長は会談後、「大手ハイテク企業の1社が、民間によって管理される代替グローバル通貨を作り出すことには、やはり不安が残る」と述べた。
フィナンシャル・タイムズの新たな報道によると、規制当局の監視が強まるにつれて、リブラ協会の内部にも警戒が広まっているという。高まるプレッシャーの中、リブラ協会に参加する3社が匿名で、「リブラ協会から距離を置くこと」を非公式に話し合っているとの報道もある。
フェイスブックは、政策立案者、規制当局、専門家らとの堂々巡りの議論は、計画発表当初から織り込み済みだとしている。関連する動きでは、フェイスブックが開始した「バグ賞金稼ぎプログラム」も新しいトピックだ。このプログラムは、重大なバグを発見したセキュリティ研究者に対して最高1万ドルを支払うものだ。リブラ協会のマイケル・イングル開発責任者は、プログラムを説明するブログ投稿の中で次のように述べた。「グローバル暗号通貨を世に送り出すには国際社会の協力が必要です。私たちは、リブラを正しく流通させるために時間をかけて、しっかりと取り組むつもりです」。