ニューラリンク、脳インターフェイスの臨床試験実施を申請
イーロン・マスクが創業したスタートアップ企業のニューラリンク(Neuralink)は、7月16日夜にサンフランシスコで開催されたイベントで、ミシンのようなロボットを初公開した。神経細胞の活動を感知するために、柔軟性のある極細の電極を脳深くに埋め込むロボットだ。
今回の発表自体は、MITテクノロジーレビューの既報とほぼ同じ内容だった(こちらで本誌アントニオ・レガラード上級編集者の自己採点が確認できる)。ニューラリンクは、脳内に埋め込んで神経細胞の活動を感知できる極細の糸状の電極(人毛より細い)を設計したと発表した。また、電極を脳内に埋め込む手順を実行するロボットも脳神経外科医の指導の下、開発した。ブルームバーグの報道によれば、ニューラリンクはこのロボットで19匹の動物に糸状の電極を埋め込み、そのうち87%が成功している(プレゼンの全動画とホワイト・ペーパーが公開されている)。
このテクノロジーはラットで試験されてきたが、イベントの最中に登場したマスクは、サルでも検証していることをうっかり漏らしてしまった。「念のため付け加えると、サルは自分の脳でコンピューターを操作できます」。ニューラリンクはこのシステムにより、ゆくゆくは大量の情報を読み込み、送信できるようになると主張している。
イーロン・マスクは2017年、ニューラリンクの存在を初めて公表した(実際の設立は2016年)。目標は、人工知能(AI)が人間を凌駕する世界で、人間がAIに対抗する手段を提供することだ。マスクは以降、ニューラリンクに1億ドルを投じてきた。
ニューラリンクは、2020年の第2四半期に志願者による臨床試験を開始する計画で、米国食品医薬品局(FDA)の認可を待っている。頭蓋骨に8ミリメートルの穴を4つ開けて糸状の電極を挿入し、耳の後ろのインプラント(埋め込み機器)に神経細胞のデータを送る。そして、そのインプラントからコンピューターに情報を送信するわけだ。スケジュールはかなり野心的なもので、控え目に言っても実現の可能性は低い。
マスクはステージ上で、未来のAIとの融合についてさらに話した。「それほど強力ではないAIの下でも、人間は取り残されてしまうでしょう。高帯域の脳機械インターフェイスがあれば、私たちはAIの仲間に加わる道が開かれます」と、(いつもの控え目な調子で)マスクは語った。
しかしガーディアン紙によれば、ニューラリンクのマシュー・マクドゥーガル主任神経外科医は、このシステムは「治療法が見つかっていない重度の医学的な疾患のある患者だけを対象」としたもので、上半身の脊髄損傷による全麻痺のある患者を対象とする予定だ。AIとの融合なのか、医療目的なのか、どちらなのだろうか? いずれにせよ、このインプラントがこうした状況をどう治療するのかは不明だ。医療行為としての承認を得るつもりならば、ニューラリンクには疑問に答える義務があるだろう。