アマゾンがクラウドAIサービスを大量発表 グーグル、MSに反撃
クラウドはもはや、単なるデータ置き場ではない。人工知能(AI)の戦いが繰り広げられる戦場であり、アマゾンはあらゆるライバル企業をねじ伏せようとしている。
クラウドとして知られる天空のデジタル領域は、ファイルを保管したり、コードを実行したりできるリモート空間として始まった。だが、データとアルゴリズム、この2つを結びつけると、大量の情報を取り込み、それを賢く処理する、AIを実行する理想的な場所となる。大手テック企業はすでにそのことに気づいており、以前の記事で説明したとおり、AIをリモート・サーバー上でサービスとして開発者に提供する戦いは白熱している。いまや、クラウド・コンピューティングの先駆者アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、マイクロソフトやグーグルといったAIに精通した企業にジリジリと追い上げられているのだ。
だがアマゾンは、11月29日にラスベガスで開催されたイベントで、そうした競合企業への態度を明確に示した。ライバルの追い上げを食い止め、クラウド事業の優位性を死守するために、新たなAIサービスを大量に発表したのだ。
発表された主な新サービスは、アマゾンのクラウド・サーバー上で実行できるAIソフトウェア・パッケージのシリーズである。「トランスクライブ(Transcribe)」は、音声を音声データに変換して、タイムスタンプと句読点を追加した正確なテキストに変換する。深層学習を使っており、テキストを7つの言語に翻訳することもできる。「コンプリヘンド(Comprehend)」は、テキストから感情を検出するサービス、「レコグニション(Rekognition)」は映像から人物や行動、物体を検出したり、追跡したりできるサービスである。どれも目新しい技術ではないが、肝心なのは、一連のソフトウェアは、開発初心者でもアマゾンのクラウド内にAIを簡単に取り込めることだ。
ほかにも、「セージメーカー(SageMaker)」と呼ばれるAI開発プラットホームを発表している。セージメーカーは、開発者がニューラル・ネットワークの構築、訓練、実行を簡単にできるように設計されている。プログラム可能な深層学習向けのビデオ・カメラ「デープレンズ(DeepLens)」も発表した(冒頭の写真)。デープレンズは、カメラ本体でAIアルゴリズムを実行できるほどの性能を持つ。AIとハードウェアの組み合わせで何ができるのか、開発者にアイデアを発想するきっかけを与える商品のようだ。
発表された新サービスから、アマゾンのはっきりしたメッセージが読み取れる。ドロップボックス(Dropbox)で複数のファイルを操作するのとほとんど同じように、クラウド上でできるだけ簡単にAIを使えるようにしたいということだ。理にかなった戦略であり、AIを導入したいが具体的な方法がよく分からない企業の人気を間違いなく集めるだろう。だが、一連の新サービスでアマゾンがライバル企業を一蹴できるかどうか、その答えはまだ分からない。
- 参照元: Amazon