CRISPR療法、鎌状赤血球症と地中海性貧血の治療で新成果
ヒトの遺伝子を編集して遺伝性疾患を治療する時代が到来した。バイオテクノロジー企業2社の発表によれば、血液疾患を患っていた2人の患者の疼痛症状を解消したということだ。
患者の1人は鎌状赤血球症を患っており、もう1人はベータサラセミア(地中海性貧血)を患っている。この2人にとって問題は、血中で酸素を運搬するヘモグロビンが少なすぎることだ。
これらの患者は今年に入ってから、それぞれ集中治療を受けた。治療では、医師が骨髄細胞を採取し、遺伝子編集技術「CRISPR(クリスパー)」を用いて、成人では通常活性化されていないヘモグロビン遺伝子の第2コピーを活性化した。 その後、遺伝子編集した細胞を、患者の体内に戻した。
他に類を見ない取り組みにより最先端を進む企業であるクリスパー・セラピューティクス(CRISPR Therapeutics)とバーティックス・ファーマシー(Vertex Pharmaceuticals)は、これらの治療が有効に機能した兆候があるという。たとえば、欧州に住むベータサラセミアの患者は、これまで年間約16回輸血を受けていたが、治療を受けてから輸血は必要なくなった。非営利メディア組織であるNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)によると、ヴィクトリア・グレイという34歳の鎌状赤血球症の患者は、典型的な症状である疼痛発作に苦しむことがなくなったという。
サラ・キャノン研究所(Sarah Cannon Research Institute)のハイダル・フランゴール医師は、「この予備的データは、遺伝子編集が鎌状赤血球症の患者の治療に実際に役立ったことを初めて示しています。非常に画期的なことです」とNPRに語った。
CRISPRテクノロジーの明白な成功により、遺伝子療法の具体的な成果は増加し、病気の原因となる遺伝子の修復と置き換えの研究はさらに発展するだろう。今回の2人の患者は、遺伝子を編集された骨髄細胞を再注入する前に、化学療法で体内の免疫システムをほとんど破壊する必要があったため、いくつかの深刻な副作用に苦しんだ。
これらの血液疾患の治療は、入院を含め、生涯にわたり多大な費用がかかる。そのため、CRISPRによる治療が承認された場合、保険会社に数百万ドルの治療費を請求しようとすることが予想される。今のところ、両社は費用の話はしたくないようだ。クリスパー・セラピューティクスのCEOであるサマース・クルカーニは、フォーブス誌に対し、「何であれ、価格決定について考えるのはまだ尚早です」と語った。