習近平首席がブロックチェーン注力を呼びかけ、「監視強化」批判も
以前から知られてはいたものの、中国の指導者層による最近の3つの動向からは、この国がブロックチェーンをどれだけ真剣にとらえているかが伺える。だが、中国政府がこの技術を使って成し遂げたいと望んでいることは、ビットコインのような非中集権型暗号通貨システムの目指す理念とはほど遠い。
10月24日、政府の会合に出席した習近平中国国家主席は、「このチャンスを逃すことなく」 ブロックチェーン技術開発における「主導的地位」を獲得しようと呼びかけたと、中国の国営メディアが報じた。同月26日には、ブロックチェーン・システムに欠かせない要素である暗号に関連する特定の規制や法的問題に中国政府が対処するために、新たな法律を成立させたと報じられた。そして28日、ロイターが報じたところによると、上海で開催されたフォーラムでスピーチをした中国人民銀行の科学技術部門のリ・ウェイ(理偉)部長は、民間銀行に対し、金融事業へのブロックチェーン導入を強化するよう要請した。
中国人民銀行は、デジタル通貨とブロックチェーン技術の研究を2014年から進めてきた。2017年には、5か年計画の一環としてブロックチェーン開発に注力すると発表した。テック企業大手のテンセントとアリババがブロックチェーン・プラットフォームの開発に取り組んでおり、人民銀行はデジタル通貨を発行する準備はほぼ整ったとしている。
世界のビットコイン採掘者(マイナー)人口の大部分を抱える中国だが、ビットコインのような公開型ブロックチェーン・システムに対しては、概して敵対的な姿勢を取っているようだ。公開型システムにおいては、誰でも身元を明かすことなくネットワークに参加し、共有台帳を管理し合うことができる。中国は新規暗号通貨公開(ICO)と暗号通貨取引をすでに禁止しており、ビットコインの採掘事業を厳格に取り締まる計画にも言及している。
中国のインターネット検閲機関は1月に、「ブロックチェーン情報サービス」を提供するすべての「エンティティ(主体)またはノード」に対し、政府への登録とユーザーの身分確認情報の収集を義務付ける新たな規制制度を承認した(デジタル通貨に特化したニュースサイトであるコインデスク(CoinDesk)の報道によると、500を超えるプロジェクトが登録されたという)。
暗号通貨愛好家の多くは、こういった中央集権的な支配をすれば、ブロックチェーンを使用するそもそもの目的がなし崩しになってしまうと訴えるだろう。彼らが考えるところのブロックチェーンの意義とはつまり、より多くの力を政府や銀行といった権力主体からユーザー側に委譲することだ。しかしそれどころか中国は、国民の消費行動を事細かに把握し、取引への支配力を高める手段としての可能性を、ブロックチェーン技術に見い出しているようだ。カードーゾ・ロースクールの法学者、アーロン・ライト教授は、中国がブロックチェーン技術を使ってやりたいことは、「グレート・ファイアウォール(万里のファイアウォール)」と同様に国を取り囲む「グレート・ペイウォール」を築くことのようだとツイートした。