発行間近? 中国政府のデジタル通貨について分かっていること
ここ数週間、中国人民銀行の幹部が、自国通貨である「人民元」のデジタル版を発行して物理的な現金と置き換え、消費者の支払いに使用する準備がほぼ整ったことをほのめかしている。
ブロックチェーンを使用するかどうかや、システムをどの程度プライベートなものにするのかなど、仕組みについては不明な点もある。そうした未知の要素はあるものの、同行幹部らが最近公けにしているコメントから、プロジェクトのスケジュールや動機がある程度は明らかになっている。現在分かっている3つの点を紹介しよう。
第一に、導入は「近い」ということだ。「近い」の意味がどうであれ、中国人民銀行調査局のワン・ジン(王信)局長が7月に出したコメントは、来年独自の「リブラ(Libra)」ステーブルコインを立ち上げるとするフェイスブックの計画が、デジタル形式の政府発行通貨を展開するという中国の計画を加速させたと解釈する向きもある。
同行決済部門のムー・チャンチュン(穆長春)副局長は8月上旬、デジタル通貨が間もなく発行されると述べた。8月下旬のフォーブスの記事では、早ければ11月に導入される可能性が示された(一方で中国の国内メディアは、フォーブスの記事のスケジュールは不正確だと指摘している)。
第二に、中国がデジタル通貨を発行する動機の少なくとも1つは、国の金融主権を守ることにあるということだ。電子決済手段はすでに中国で広く普及している。1四半期当たり数兆ドル相当の決済を取り扱う人気のモバイル決済アプリが、中国国内から現金取引を急速に駆逐しているのだ。
「電子決済手段がこれほど発展している時代に、なぜいまだに中央銀行がそのような電子通貨を手がけようとしているでしょうか?」。ムー副局長はオンラインで公開された講演の中で、先週そのように語った。「それは、私たちの金融主権や通貨の法的地位を守るためなのです」。
ムー副局長は、中央銀行発行のデジタル通貨がテンセント(Tensent)やアリババ(Alibaba)などの民間企業が運用する支払いプラットフォームを凌ぐ点として、「これらの商業プラットフォームは破綻によって利用者の資金が失われる可能性があります」と付け加えた。
中国人民銀行が懸念していると思われる別のポイントとしては、世界的な金融システムへの米ドルの圧倒的な影響力をリブラがさらに強化する可能性が挙げられる。リブラは政府発行通貨を裏付けとしており、通貨バスケットの50%をドルが占める計画だ。
第三に、リブラに少々似通ったものになる可能性がある。ムー副局長は最近の講演で、中国のデジタル通貨はリブラに「いくらか似たものになる」だろうと語ったとロイター通信が報じている。記事によれば、同副局長は発行予定の通貨が「匿名決済と資金洗浄防止のバランスを両立させる」ものになるとも述べたという。
ムー副局長はさらに、新たなデジタル通貨はインターネット接続がなくても使用できると語った。リブラの作り手であるフェイスブックが約束していない機能だ。その仕組みはどのようなものになるのだろうか? 中国のデジタル通貨システムに使われる技術設計に関するほとんどの疑問と同様、答えはまだ分からないが、間もなく判明するだろう。