CERN、全長100キロの巨大加速器「FCC」建造を発表
欧州原子核研究機構(CERN)が超大型加速器の建造を目指す。スイスのジュネーブ近郊にある素粒子物理学を研究するCERNは、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)に代わる、新たな加速器の建造計画を明らかにした。
CERNはLHCの4倍の大きさを持つ次世代円形衝突型加速器(FCC:Future Circular Collider)の設計報告書を公開した。加速器は粒子をループ内に驚異的な速度で送り込み、粒子同士を衝突させて発生する放射性降下物を研究者が分析できるようにする機器である。今回明らかになったFCCの設計は全長約100キロメートル。最大出力時にはLHCの10倍のエネルギーで粒子を衝突させられる。
LHCの最大の成果は、すべての物質に質量を与えるという、かつては理論上の粒子だったヒッグス粒子の発見だった(ニューヨーク・タイムズ紙のアニメーションがとても分かりやすく示している)。CERNの物理学者たちは、FCCによってヒッグス粒子の性質をより詳しく調査できると期待している。それだけではなく、FCCは未知なる物理学の扉を開き、宇宙に関していまだ答えの出ていない大きな疑問(暗黒物質は何からできているのか、なぜ物質よりも反物質が存在するのかといった、現在では見当も付かないこと)の解決にも貢献するだろう。最大の問題は、物理学の「標準モデル」では宇宙をうまく説明できないことだ(たとえば、重力をうまく説明できない)。だが、今のところLHCは代替モデルのヒントを案出できていない。
FCCに関する今回の報告書によると、FCCには過去5年間で150を超える大学から1300人以上が関わっている。FCCの計画が順調に進めば、2040年までには運用が開始されることになる。トンネルの建造コストは57億ドルになると推定されている。さらに、初期加速器に46億ドル(レプトンと呼ばれる粒子を衝突させる)、陽子を衝突させるための最終加速器に170億ドルが必要になるという。
CERNのファビオラ・ジャノッティ所長は声明で次のように述べている。
「今回のFCCのコンセプチュアルな設計報告はすばらしい成果です。物理学の根本的な知識が向上し、多くの科学技術者の進歩に貢献し、社会に広く影響を与えるFCCの非常に大きな可能性を示すものです」。