攻めのカリフォルニア州、炭素排出ゼロの次は「ニュートラル」へ
世界第5位の経済規模を持つ米カリフォルニア州で、2045年末までに州の電力を二酸化炭素(CO2)排出量ゼロのエネルギー源のみで供給することを義務付ける新法が成立した。歴史上、もっとも野心的な気候政策の1つだ(「カリフォルニア州、2045年までに「炭素ゼロ発電100%」実現へ」を参照)。
カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事は9月10日、州法に加えてさらに重要な策を推し進めた。ブラウン知事は、2045年末までにカリフォルニア州の経済全体をカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収量を均等に保つこと)にする方法を検討するよう州当局に指示する州知事命令に署名した。この命令により、カリフォルニア州の電力部門だけでなく、運輸や製造業など、その他の部門の変革も求められることになる。さらに今回の命令では、植物やテクノロジーを使って大気からCO2を回収し、何らかの方法でそれを再利用または貯蔵する「ネガティブエミッション技術(Negative Emissions Technologies: NET)」を、2045年以降も継続するという目標も設定している(「Maybe we can afford to suck CO2 out of the sky after all」を参照)。
現時点では、命令がどの程度執行または達成可能かは不明瞭だ。というのも、海運、航空、長距離トラック輸送など、発電所以外の他の産業のCO2排出量を削減するには大きな技術的諸問題が依然として残っており、またネガティブエミッション技術の大規模運用もまだ実績がないからだ(「『発電所以外』の温室効果ガス、依然として打つ手なし」を参照)。
スタンフォード大学ウッズ環境研究所(Stanford Woods Institute for the Environment)気候・エネルギー政策プログラム担当のマイケル・ワラ所長は、「いずれは地位を退く州知事が発する命令と、法律は同等ではありません」とツイートした。「私は今回の法制度を褒め称えたいと思いますし、この知事命令は米国が進むべき方向を示す重要な道標であると考えています」。
一部評論家は、厳しい規制やカリフォルニア州の経済規模、テクノロジーに対する法令の柔軟性を考慮すると、今回のクリーン電力法令は、米国の現行法におけるもっとも重要な気候政策であると見ている。 MIT テクノロジーレビューが以前伝えた通り、カリフォルニア州は技術的な実現可能性を試す試験台となっている。クリーンエネルギー技術を展開する巨大市場を提供し、他の州や国にも応用できる多くの知識を生み出しているのだ。