ブロードコムが買収を取り下げ、一息つくクアルコムの内憂外患
テック業界における過去最大の買収提案は、現在正式に取り下げられている。だが、次に何が起こるかについての憶測は絶えない。
シンガポールに本社を置くブロードコム(Broadcom)は3月14日、米国企業のクアルコム(Qualcomm)を1170億ドルで買収する提案を取り下げた。
ブロードコムは次の一手として、本社を米国に移転する計画を継続すると発表した。もっと早く移転していれば、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)の調査を逃れられたかもしれないことは記しておく価値があるだろう。CFIUSの調査は最終的に、買収の阻止をトランプ大統領に決断させた一因となっている。
クアルコムにとっては望み通りの結果となったブロードコムによる買収提案が発表されてからずっと抵抗し続けてきたからだ(クアルコムはブロードコムの100倍以上ロビー活動をしてきた)。だが、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ブロードコムの買収取り下げは、クアルコムの置かれた状況をさらに悪化させるとしている。というのは、米国連邦取引委員会とアップルはいずれも、クアルコムの事業活動には違法性があり、投資家が業績に不満を持っていると訴えているのだ。クアルコムは、かねてより計画していたオランダのチップメーカーNXPの買収により、後者の懸念を払拭したいと考えているはずだ。
ディールブック(DealBook)によれば、買収取り下げによりクアルコムは、政府による激しい保護主義の渦中に身を置くことになるかもしれないという。ブロードコムによる買収提案を米国政府が却下した背景には、5G無線技術開発の主導権を奪われ、中国に支配権を握られるのではないかという懸念があった。同じような反外国人感情がクアルコムのNXP買収に影響を与えるかもしれず、他の技術分野にも広がりかねない。
ブルームバーグ(Bloomberg)は、今回の試練から得られた教訓があるとすれば、外国企業による半導体事業買収に対する計画を米国が持っていないことだとしている。チップメーカーは近年、効率を追求して利益を得るために、半導体事業を相互に買収し合うことを強く望んでいる。米国の姿勢は、こうした業界再編を一層困難にするかもしれない。