ディレクTV、「バッテリー異常」で爆発危機の人工衛星を緊急移動へ
15年前に打ち上げた人工衛星に爆発の危険があるとして、人工衛星の運用会社は安全な「墓場軌道」に衛星を移動させようとしている。
問題となっている人工衛星は、ボーイングが製造し、ディレクTV(DirecTV)が運用している「スペースウェイ1(Spaceway-1)」。2005年〜2007年に打ち上げられた3基の人工衛星ネットワークのうちの1基で、高解像度の衛星テレビ放送提供のために使われていた。現在はバックアップ用として運用されている。3基のスペースウェイ人工衛星はすべて、地球上空約3万5400キロメートルの静止軌道(対地同期軌道またはGEOとも呼ばれる)上にある。
ディレクTVが米国連邦通信委員会(FCC)に提出した書類によると、爆発の理由は、スペースウェイ1が12月に「重大な異常」によりバッテリーが熱損傷を受けたからだ。ボーイングは、損傷を受けたバッテリーの電源が入った場合、「破裂する可能性がある深刻なリスク」があるとの評価を下している。
スペースウェイ1は太陽光発電によって稼働しているが、太陽光が利用できない場合は、電源が自動的にバッテリーに切り替わる。折しも地球は、年に2回人工衛星が地球の影に入る「人工衛星の食」の時期に向かっている。この時期におけるバッテリーの使用は「避けられない」ことであり、爆発する可能性のあるバッテリーを人工衛星から切り離す手段もない。バッテリーの爆発によってスペースウェイ1は静止軌道上を漂い、他の人工衛星を脅かすデブリ(宇宙ごみ)と化す可能性がある。
FCCはディレクTVに対し、次の「人工衛星の食」の時期が始まる2月25日までに、スペースウェイ1の任務を終了し、人工衛星の廃棄場所とされる墓場軌道(GEOより約322キロメートル高い軌道)に移動する許可を与えた。移動には21日かかり、約7日間で可能な限り多くの推進剤を排出しなければならない。
墓場軌道に移動する人工衛星は、推進剤を完全に空にしておく必要がある。しかしディレクTVは、わずか7日間では時間が足りないとしていて、FCCに規則の免除を要請している。ディレクTVは、人工衛星を最終的に墓場軌道に移動させるまでに、より多くの推進剤を排出するためのいくつかの方法を検討しているとしているが、具体的な内容についての質問への回答は得られなかった。
ボーイングは、こうしたバッテリーの不具合は「他の人工衛星では発生する可能性が非常に低い」ことが起きた結果だと述べている。ディレクTVおよびボーイングは、バッテリーの損傷の詳細や、他の2基のスペースウェイ衛星を含むその他の人工衛星にどの程度までリスクが及ぶのか、詳しく明らかにしていない。