太陽光より蓄電に補助金を、ビル・ゲイツの主張は正しいか?
太陽光発電所と風力発電所を支援する政府補助金を、まだ自力での競争が難しいクリーン・テクノロジーへ向けるべきだと、ビル・ゲイツが訴えている。彼の考えは理にかなっているのだろうか?
マイクロソフトの共同創業者であり、クリーン・エネルギーにも投資している投資家のゲイツは、ブルームバーグのインタビューで、太陽光発電と風力発電のコスト低下とシェアの増大は、これまでの気候変動との闘いにおける数少ない成功事例の1つだと語った。
だがゲイツは、発電コストはこれ以上の低下が見込めず、他の分野のほうがはるかに支援の必要性が高いと述べた。他の分野とは、送電網エネルギー貯蔵、洋上風力発電施設、それに農業やセメント製造、製鋼といった発電以外の部門で利用できる温室効果ガス排出量削減ツールだ。
再生可能エネルギーのさらなる普及を阻む大きな障壁の1つは、発電にかかるコストではない。晴れているとき、あるいは風が吹いているときにしか発電できないという事実だ。より高性能で安価なエネルギー貯蔵テクノロジーがあれば、この制約に対処できる可能性がある。
ゲイツが率いるクリーン・エネルギー投資ファンド「ブレークスルー・エネルギー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)」は、まさにこの課題に取り組むスタートアップ企業に対し、これまでに数千万ドル規模を投資している。出資先企業にはクイドネット(Quidnet)、フォーム・エネルギー(Form Energy)、マルタ(Malta)などがあり、ボストン・メタル(Boston Metal)へも出資している。ボストン・メタルは二酸化炭素を排出しない製鋼手法の開発に取り組んでいるマサチューセッツ工科大学(MIT)のスピンアウト企業だ。
ゲイツの言い分は正しいのだろうか? 補助金の投入先を切り替えるべきなのか? もしここが理想の世界なら、答えはそのとおりだろう。政府は補助金を適用して、スタートアップ企業が自力で市場競争ができる規模と成熟期のレベルに到達するまでこれらのテクノロジーを支援する。
使える補助金の総額が限られている以上、最も必要性が高く、最も手厚い支援を必要とするツールに資金は向けられるべきなのだ。
だが、話はそう単純ではない。再生可能エネルギーは天然ガスや石炭と単に価格競争をしているわけではない。電力会社が手がける新しい発電施設として、再生可能エネルギーを選んでもらう必要がある。
気候変動の危険性を鑑みれば、太陽光や風力の発電施設は、温室効果ガスを吐き出しながらこの先何十年も使用できる火力発電所の運用停止を始めるほうが、かえって経済的だと言えるほどの低コストを実現しなければならないのだ。
再生可能エネルギー部門の成長が失速した昨年の状況からみると、政府による適切な補助があっても、そのような理想には程遠い状況にある。