ビル・ゲイツのエネルギーファンド、MIT教授らの企業へ初出資
2016年末に発表された「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)」と名づけられたビル・ゲイツが支援する10億ドルのファンドが、ついに2つの有望なエネルギー貯蔵スタートアップ企業に初の投資を実行した。
ファンドは、クリーンエネルギーへの移行に必要なテクノロジーに対して長期投資をするために設立された。このほど、フォーム・エナジー(Form Energy)へ900万ドルを拠出するとともに、クイドネット・エナジー(Quidnet Energy)の640万ドルの資金調達へ参加したと、Webメディアのクオーツ(Quartz)が伝えた。
フォーム・エナジーは、バース・エナジー(Verse Energy)とベースロード・リニューアブル(Baseload Renewables)が最近合併してできた会社だ。以前「再生可能エネルギー源から送電網へ24時間連続して安定的な電力供給ができる電池。それもリチウムイオン電池と比べて少なくとも5分の1のコストで生産できる電池の開発を目指している」という記事をMITテクノロジーレビューで掲載している。具体的には、硫黄水溶液をベースにしたフロー電池を開発中だが、充放電時間が異なる他の化学反応を利用する電池の設計も研究中だと、フォーム・エナジーの共同創業者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)のイェット‐ミン・チェン教授は語った。
クイドネット・エナジーは、現在最大のエネルギー貯蔵装置である揚水発電に新たな工夫を加えようとしている。現在の揚水発電は異なる高さにある2つの貯水池を使うが、これは地理的な制約が大きい上に環境破壊につながる。同社の揚水発電は井戸にポンプで注水する。使われなくなった井戸でも、新たに掘った井戸でもよい。
太陽光や風力など再生可能エネルギー源の電力コストは急激に下がっている。しかし、発電量の変動が大きすぎるので、バックアップとして他のエネルギー源がなければ十分な信頼性が得られない。クリーン・エネルギー源がエネルギー送電網の中核となるためには、より低コストの長期エネルギー貯蔵手段か、より優れた送電システムの、いずれかまたは両方が必要となる。リチウムイオン電池の可能性がもてはやされたが、十分な量のエネルギーを必要な規模で貯蔵するためには、まだコストが高すぎるのだ。
- 参照元: Quartz