ホワイトハウス広報官がフェイク映像を拡散?ネットで議論に
デジタルねつ造の恐るべき未来が、CNNのジム・アコスタ記者の映像という形で現れた。上の映像を見てほしい。右側の映像は、11月8日の記者会見中、アコスタ記者がホワイトハウスのスタッフに乱暴に対応しているように見える(オリジナルの映像は左側)。
どちらが事実なのか? ソーシャル・メディア上ではいま、論争が持ち上がっている。右側の映像は、保守系の陰謀サイト「インフォウォーズ(Infowars)」の編集者によって、アコスタ記者が実際以上に乱暴な振る舞いをしたかのように修正されたのではないか、との疑いが持たれているのだ。ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官が、アコスタ記者の取材許可証取り上げの正当性を訴えるためにこの映像をリツイートしたのだから、事態は深刻だ。
鵜の目鷹の目の多くのツイッター・ユーザーが指摘しているように、記者と女性スタッフとの接触が起こった瞬間、映像がごくわずかに早回しされているように見える。
この映像が、オリジナル映像をぎくしゃくしたアニメーションGIFに変換して加工したものだと指摘するのは、デジタル・フォレンジックの権威であるダートマス大学のハニー・ファリド教授だ。「低画質、低速度、シースパン(C-SPAN、政治専門ケーブルテレビ)の絶妙な撮影アングルをうまく組み合わせると、記者とスタッフとの間には実際以上の接触があったかのように見えるのです」。ファリド教授は映像を見たものの、詳細な分析はしていない。
人工知能(AI)によって映像を加工するのがかつてなく容易になっていることを考えると、厄介な出来事だ。この私でさえテッド・クルーズ上院議員の生霊おふざけ映像をそれほど苦労せずに作れたのだから。「グランド・トゥルース(検証データ)」としての動画の効力は、(簡単に映像操作ができる)デジタル・ツールが大衆化するにつれて損なわれていく。そして権力者たちが自分に都合の悪い証拠の信用を失墜させることが容易になり、さらなる「フェイクニュース」が叫ばれるわけだ。
だが騒動となっている映像は、他人をそそのかしたり、物議をかもしたりするのにわざわざ賢いAIの手を借りる必要がないことを示している。慎重にお膳立てされ、編集された動画で十分ということだ。ファリド教授はこう述べた。「この一件は、動画が簡単に操作できるようになったときに出てくる問題そのものをよく表しています。誰でもあの映像は偽物だと言い張ることができ、その意見が信用されるのです。それこそ、多くの意味で、実際のフェイク動画以上に大きな脅威なのかもしれません」。