米ゲノム解析企業が事業停止、背景に中国資本の注入か
格安のゲノム解析サービスを提供していたベリタス・ジェネティクス(Veritas Genetics)が新たな資金調達に失敗し、米国での事業を停止することになった。
ボストンに拠点を置くベリタス・ジェネティクスは、2018年7月に全ゲノム解析サービスを599ドルに値下げし、消費者の関心を集めていた。
ただ、ベリタスのサービスは元々赤字であり、解析のたびに損失を出していた。同社が目指していたのは、ネットフリックス(Netflix)のようなサブスクリプション(定額課金)モデルの導入だ。継続的に料金を支払うことで、顧客が自身のDNAから疾患リスクの予測といった新しい情報を得られるようにする計画だった。
ベリタスはこれまでに5000~1万人のゲノムを解析したものの、サービスへの需要が弱いことを示す兆候は以前からあった。
同社の事情に詳しいある人物は、中国企業からの出資を受けたことへの懸念から、ベリタスが新たな投資家を見つけられず、米国市場からの撤退に追い込まれるだろうと以前から述べていた。
ベリタスの主要株主は、リリー・アジア・ベンチャー(礼来亚洲基金:Lilly Asia Venture)、シムシア・ファーマシューティカル(先声薬業:Simcere Pharmaceutical)、トラストブリッジ・パートナーズ(摯信資本:TrustBridge Partners)など、みな中国企業だ。
米国政府は、DNAデータを含む機密領域で事業を展開する企業に対し、中国資金を受け入れないよう警告している。2019年6月には米国の保健企業ペイシェンツライクミー(PatientsLikeMe)に対し、中国の投資家から別の米国企業への株式売却を命じた。
関係者によると、ベリタスは2019年になって5000~7500万ドルの資金調達を目指していたが、中国企業が所有することを理由に、国内の投資家らは出資を見送ったという。
ベリタスは5日の午後、「資金調達をめぐる予期せぬ困難な状況」により、米国内での営業を停止するとツイートした。米CNBCの報道によると、ベリタスはほとんどの従業員を解雇したという。
ベリタスは米国市場への復帰を目指しながら、米国外での事業は継続すると述べている。「明言できるのは、今回のことが米国での事業のみに一時的に影響をもたらすということです」とベリタスのミルザ・シフリック最高経営責任者(CEO)はメールで述べた。シフリックCEOは、米国外の顧客には引き続きサービスを提供すると述べた。