翻訳アルゴリズムで化学反応を予測、IBMの研究者が発表
有機化学を原子や分子ではなく、単語や文と考えることで、人工知能(AI)アルゴリズムを用いて化学反応を予測する方法が発見された。
IBMの研究者がアーカイブ(arXiv)に論文を掲載し、神経情報処理システム(Neural Information Processing Systems:NIPS)学会で発表した研究によると、化学反応の予測を翻訳問題として扱うと、従来のモデルよりも高い確率で正しい反応を導き出せるという。
「直感的に言って、化学者の化合物に対する理解と、言語学者の単語に対する理解の間には類似性があります」と研究者は書いている。
研究者は、機械翻訳でしばしば使われるニューラル・ネットワークを用いて、39万5496件の化学反応を含んだデータセットでシステムを訓練。ニューラル・ネットは、未見の化合物を予測できるようになるために、そのデータから化学反応の「構文」を学習した。学習済みのアルゴリズムは、最も可能性が高い上位5つの化学反応を挙げ、1番目の予測の正解率は、他の予測モデルの正解率を6ポイント上回る80%だった。
文献などにまだ記載されていない化学反応は何百万もあるので、今回の方法は創薬などの研究のスピードアップに役立つだろう。しかし、研究者たちは、モデルにデータを追加するにつれて、より多くの二重チェックが必要になると語っている。論文を執筆した研究者の一人であるテオドロ・ライーノ博士はIEEE Spectrumに、「このツールは、有機化学者にとって代わらないまでも、助けにはなるだろう」と話した。