子宮内の胎児に幹細胞注入、遺伝性血液疾患を出産前に治療
深刻な病気を患った胎児が、母親の幹細胞を注入され、見たところ健康な新生児として出産された。出生前の疾病治療の新しい方法となるかもしれない。
妊娠期間中に医師たちは、この胎児が水腫と重度の貧血、低酸素状態にあることを検知した。命に関わるこれらの症状は、遺伝性の血液の疾患であるアルファサラセミア・メジャーが原因となっていた。こうした症状を持つ胎児は、ほとんどが死産となるか、出産直後に死亡する。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のチームは、妊娠18週から25週の間に胎児の母親から骨髄を抽出し、幹細胞を分離した。それからこの幹細胞を胎児の臍帯静脈に注入して、血流内に循環させ、正常な血液細胞に育てた。
幹細胞移植から4カ月経った2月に、赤ちゃんは生まれた(上の写真は赤ちゃん本人と両親)。この処置により治癒するかどうかを判断するのは時期尚早だ。しかし、医師たちはこの手法を用いて、今回の赤ちゃんの疾病の一般的な形態であるベータサラセミア(地中海性貧血)や、鎌状赤血球症をはじめとする重い遺伝性疾患を撲滅できないかと期待している。