遺伝子編集ベビー問題:「2例目も妊娠初期」中国人研究者が主張
賀建奎(フー・ジェンクイ)准教授は、ある女性がクリスパー(CRISPR)技術を利用した赤ちゃんをすでに妊娠していると公表した。これで2例目となる。中国の科学者であるフー准教授は、「遺伝子編集ベビー」を世界で初めて誕生させたと主張している。
フー准教授は、香港大学で開催されたヒトゲノム編集国際サミット(International Summit on Human Genome Editing)の2日目に登壇し、「新たにもう一例の妊娠が進んでいます」と述べ、2例目が妊娠の初期段階であると主張した。フー准教授は遺伝子編集技術を利用し、1例目の双子の女の子にHIVウイルスへの耐性を付与できたことを「誇り」に感じていると語り、自身の研究の正当性を主張した。フー准教授は、「この研究は、双子の女の子のためだけではなく、数百万人の子どもたちのためになる研究です。彼らにはHIVのワクチンが適用できないので、遺伝子編集による防護が必要なのです」と述べた。
プレゼンテーションの後、フー准教授は出席者から研究に関する質問を受けた。ノーベル賞受賞者であるカリフォルニア工科大学のデビッド・ボルティモア教授は、こうした方法で生殖細胞系列を編集するやり方は「無責任だ」と述べ、研究について明らかになっていないことが多いとフー准教授を非難した。ボルティモア教授は、「研究の透明性が低く、科学界による自己制御がうまくいかなかったと考えています」と述べた。また、フー准教授のプレゼンテーションのスライドがサミットの主催者に提出された際、移植された胎芽あるいは赤ちゃんに関する情報がどのスライドにも含まれていなかったことも明らかになった。
参加者から挙がった質問の多くは、実験の同意のプロセスに関する内容だった。フー准教授は、「ボランティアの方々には20ページにわたる文書を入念に確認してもらいました」と述べ、「研究の趣旨を説明した上で同意してもらい、遺伝子編集技術とその潜在的な影響及び利点についても、十分に理解していただいています」と主張した。フー准教授は、自身が所属する南方科技大学の設立財源で賄われているシーケンシング費用の一部に加え、すべてのプロセスにかかる費用を負担してきたと主張した。しかしながら、大学側はフー准教授の双子に関する研究成果をすべて否定している。
MITテクノロジーレビューが、CRISPR(クリスパー)技術を利用した赤ちゃんを誕生させる研究がすでに進んでいることを明らかにしたのは、わずか数日前のことだ。フー准教授の研究は中国の学者からも非難されており、その後、深センの医療倫理専門委員会もフー准教授の研究に対する調査を開始すると発表した。